産業技術総合研究所が開発 ビスフェノール類を分解回収

2023年08月18日

ゴムタイムス社

 産業技術総合研究所(産総研)は8⽉17⽇、リサイクルが難しいスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)を直接、原料物質に分解する技術を開発したことを発表した。ここで⽣成される原料物質の⼀つであるビスフェノールSはスーパーエンプラを構成する汎⽤的な原料であり、合成に再利⽤することができる。
 スーパーエンプラは、耐熱性が⾼く機械的強度が求められる製品に広く利活⽤されている。その反⾯、樹脂を構成している化学結合が強固であるため、モノマーに分解することは容易ではなく、リサイクル技術が確⽴されていない。今回開発された技術を使うことで、ガス化(600ºC以上)や亜臨界⽔による分解(250ºC程度、おおむね10〜20MPa)に必要な温度を⼤きく下回る150ºCという穏和な温度条件下でスーパーエンプラを分解できる。この分解技術は、安定樹脂材料のリサイクル技術確⽴への道を拓き、持続可能な社会の実現に寄与すると期待される。
 今回の研究では、ポリスルホン樹脂が構造中にビスフェノール類、特に、ビスフェノール S 型の⾻格を有することに注⽬。ビスフェノールSはPESUの原料としてだけでなく、⽔酸基を変換することにより、さまざまなポリスルホン樹脂の原料として利⽤できる分⼦である。ポリスルホン樹脂を分解し、ビスフェノール類を効率よく得ることができれば、ポリスルホン樹脂のケミカルリサイクルに応⽤可能だと考えました。そこで、ポリスルホン樹脂からビスフェノール類を効率よく⽣成するために、PSUやPESU、PPSUの炭素―酸素結合を選択的に切断する新たな解重合反応を開発した。  
 今回の研究により、PSUやPESU、PPSUなどいろいろなスーパーエンプラの解重合反応が⾒いだされ、それぞれのモノマーとなるビスフェノール類を回収できることが明らかとなった。本研究成果をもとに、プラスチックをリサイクルする社会の実現に向けて解重合反応の改良、解重合反応に適した触媒の開発、スーパーエンプラ以外の難分解性プラスチックの解重合反応を開発し、社会実装を⽬指す。

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