産総研とJSTが共同開発 バイオ由来PBSとPA4の新素材

2023年05月24日

ゴムタイムス社

 産業技術総合研究所(産総研)は5月19日、触媒化学融合研究センター吉田勝研究センター長、田中慎二主任研究員、小野英明産総研特別研究員らと、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が共同で、バイオマス由来のポリエステルとポリアミドを組み合わせた新しいプラスチック素材を開発したと発表した。
 同技術は、バイオマスから合成可能な生分解性高分子として知られるポリブチレンサクシネート(PBS)と、同じくバイオマスから合成可能な生分解性高分子であるポリアミド4(ポリアミドの一種、「PA4」)を繰り返し結合させた新素材を得るもの。この素材は、透明なフィルムとして成形することが可能。このフィルムは、汎用プラスチック水準の強度を示している。また、引き伸ばすほど強度が増すという特徴を有している。
 本複合材料は汎用プラスチックフィルムや繊維の代替品や、医療プラスチックへの応用が期待され、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する。
 産総研は、バイオマス由来材料の研究開発において生分解性ポリアミドであるPA4のポリエステルとの複合化に取り組んできた。PA4に対する複合成分として、生分解性ポリエステルPBSに着目した。PBSは柔軟性があり融点が低いため成形加工しやすい性質をもつため、成形時に分解することや、柔軟性に乏しいなどのPA4の欠点を補完できると考えられている。
 しかし、PA4とPBSについては簡単に混ぜ合わせることができず、これまでに、これらを均一に混ぜ合わせるため、PBSとPA4を結合した構造の両親媒性高分子「PBS-b-PA4」を設計し、合成技術を確立した。今回、この技術を応用し、PBSブロックとPA4ブロックを交互に繰り返し結合したマルチブロック型共重合体を開発した。
 今回開発した複合化の手法は、PBS、PA4以外のさまざまな高分子の設計にも適用でき、新たなバイオマス由来プラスチック材料の開発に役立つとしている。
 今後は合成経路を見直し、コストダウンを図りつつ、物性や機能性の詳細な評価を通じて、本材料に適する製品群を選定する。さらに、別種のポリエステルやポリアミドの組み合わせの検証を通じて、多様なニーズにも応答可能な新材料の開発を目指す。
 なお、本研究開発の一部はJSTの委託事業「戦略的創造研究推進事業 野崎樹脂分解触媒プロジェクト(2021~2027年度)」による支援を受けている。

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