横浜ゴムは1月31日、同日開催の取締役会において、清宮眞二取締役常務執行役員が代表取締役社長兼COOに就任し、山石昌孝代表取締役社長が代表取締役会長兼CEOに就任する人事を発表した。今回の人事は3月28日開催予定の株主総会後に正式承認される予定。
同日開いた記者会見で山石社長は「21年からスタートした新中期経営計画『YX2023』ではタイヤ消費財は高付加価値商品比率の最大化に努めてきた。また、生産財はATGや愛知タイヤ、そしてトレルボルグホイールシステムズ(TWS)の買収により、利益率の高いOHT事業を拡大し、タイヤ生産財に偏っていた事業構成比の適正化を図った。さらに事業売却などの構造改革を着実に進めることで、足元では売上高1兆円、事業利益率10%が視野に入ってきた」と話し、YX2023の成果を強調した。一方、今年度からスタートする新中期経営計画の策定にあたり、「市場を圧巻する中国やインドなどの新興国メーカーの勢いを目の当たりにし、改めて当社が抱える経営課題は生産技術になる」と認識を示し、「生産技術の変革を担う人材として清宮氏が適任」(山石社長)と述べ、これまでタイヤの設計開発や品質技術、グローバルで技術・生産統括を担当してきた清宮氏を選んだ理由を語った。
今後の経営体制については、山石氏が代表取締役会長兼CEOとして主に経営全般および北米を担当し、清宮代表取締役社長兼COOは主に技術生産、品質保証および日本・中国・アジアを担当。さらに、Nitin Mantri氏は取締役専務執行役員兼COOとしてOHT事業とその他海外を担当。それぞれがエリアを分担し3人体制で経営を遂行する。その理由を問われた山石氏は「急拡大する売上および海外売上比率に対応するため、それぞれが全地域を見ながら得意地域で責務を果たす」と説明した。
続いて清宮氏が社長就任の抱負を行った。清宮氏は「厳しい経営環境下でもYX2023に取り組み、着実に成果を遂げてきた。ただ、解決すべき課題が多い。当社と関係の深い自動車業界は大変革期の真っ只中であり、環境対応や電動化対応を始め、様々な技術要求に対応することが必要不可欠だ。また、タイヤ業界では新興企業との競争激化やサプライチェーンの複雑化などスピード感を持ち企業経営にあたらなければ生き残れない」との見解を示す。
その上で清宮氏は「今年度よりスタートする新中期経営計画でも山石社長の陣頭指揮で改革してきた企業体質をより強固なものとすべく、生産、技術、販売、物流が連携して継続的に成長できる仕組みの構築を進める。タイヤ事業ではさらなる製品開発業務の効率化、開発のスピードアップに取り組む。当社はこれまでの買収で得た多様な企業文化がある。これを変革のトリガーとして構造改革を進め、山石社長が7年間築き上げてきた成長戦略に技術生産の強みを組み合わせることで、社員とともに強い集団にしたい」と力強く語った。
◆清宮眞二(せいみやしんじ)氏の略歴。1964年12月20日生(59歳)。
1989年3月日本大学理工学部卒業。同年4月横浜ゴム入社、14年10月タイヤ第一設計部長、17年3月タイヤ消費財開発本部長代理兼タイヤ第二設計部長、18年3月理事タイヤ消費財開発本部長代理兼タイヤ第二設計部長、19年3月執行役員タイヤ製品開発本部長兼タイヤ第一設計部長、21年3月執行役員技術統括補佐兼タイヤ製品開発本部長、22年3月取締役執行役員技術統括兼品質保証本部担当兼タイヤ製品開発本部長、23年3月取締役常務執行役員技術・生産統括兼IT企画本部担当など。