エボニック タイヤ向け湿式シリカ事業を大幅拡大

2012年12月07日

ゴムタイムス社

 エボニック インダストリーズAGは高品質自動車タイヤ向け、湿式シリカ事業を大幅に拡大することを発表した。
 同社は引き続き、高品質自動車タイヤ向け湿式シリカ事業の成長戦略を推進していく。資源効率の向上に繫がる製品・ソリューションの開発に取り組む部門の責任者であり、取締役のトーマス・ヘーベレ氏は「湿式シリカの生産能力を2014年までに2010年対比で約30%増強することを目的とした設備投資は、既に計画の約半分が達成されています」と述べている。
 シリカ事業において世界のマーケット・リーダーである同社は、総額数千万ユーロに及ぶ資金を設備増強に投じている。「このような設備投資を通じて当社は、タイヤ業界の主要顧客の成長ニーズに遅れることなく対応しています。私たちが事業を展開するにあたり念頭に置いているのは、世界的なメガトレンドです。湿式シリカは主に、高品質の自動車タイヤの材料になっています。我が社の湿式シリカ事業は、資源効率の向上という世界的な課題に貢献しています」とヘーベレ氏はコメントしている。
 湿式シリカの市場が発展・拡大している背景として、転がり抵抗の低い高品質タイヤに対するニーズの高まりがある。欧州では2012年11月から燃費性能、二酸化炭素(CO2)排出削減、ウェットグリップ性能、タイヤ騒音などに関する明確な情報を消費者へ提供することを目的とした等級制度であるタイヤ・ラベリング制度が義務化されたが、日本でも既にこのラベリング制度が任意に導入されており、韓国やブラジルなどの国々も、それぞれ独自の制度を設けて欧州や日本に追随する動きを見せている。さらに、中国などの自動車市場が成長途上にある国についても低燃費タイヤの潜在的な普及余地は極めて大きいと言える。
 シリカはシランとともに、タイヤゴムの強度を高めるフィラー(補強用充填剤)として使用されており、タイヤ性能の大幅な向上に貢献している。シリカ―シラン・フィラー・システムの場合、転がり抵抗の大幅な低減が可能で、従来と比較して燃料を8%節約することができる。同時に、シリカ―シラン・フィラー・システムでは、雨天時や冬のような気象条件の下でも高いグリップ性能が担保される。同社はそうしたタイヤゴム用添加剤を製造している唯一無二のメーカーであり、省エネおよび交通安全に資するソリューション開発に貢献している。
 インオーガニックマテリアルズ部門の責任者であるオーマー氏は「欧州およびアジア地域では既に、湿式シリカ(自社商標ULTRASIL®およびSIPERNAT®)の生産能力の増強を実現しています」と述べている。同社は、世界9ヵ国10拠点で湿式シリカを生産しており、湿式シリカの需要動向についてオーマー氏は、「需要は当初、欧州で増加し始めましたが、今ではアジアや北米地域でも増加傾向にあります。今後、他の地域においても需要増が見込まれます」とコメントしている。
 湿式シリカは転がり抵抗の低い低燃費タイヤの材料になるばかりでなく、食品・動物飼料業界では粉末化剤や流動性改良剤として、そして塗装・コーティング業界では添加剤として使用されている。

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