レゾナックは6月25日、BEAM Technologiesおよび日本低軌道社中等と、地球低軌道(LEO)における半導体製造事業の実現に向けた覚書(MOU)を締結したと発表した。
IoT、AI、6G通信といった技術が社会の隅々まで浸透する中、その根幹を支える半導体の性能向上と安定供給は、国の産業・経済安全保障を左右する最重要課題となっている。しかし、従来の地上での半導体製造は、微細化の物理的限界や、製造過程で生じる結晶欠陥による性能の頭打ちという課題に直面している。また、地政学的なリスクは、グローバルな半導体供給網の脆弱性を露呈させた。
2030年前後に予定されている国際宇宙ステーション(ISS)運用終了後、地球低軌道における活動は民間主導の市場へ移行する。米国では既に複数の民間企業が商業宇宙ステーションの開発を進めており、欧州も連携を模索、中国、ロシア、インドも独自の拠点確保を目指している。
日本においては、日本低軌道社中がJAXA宇宙戦略基金「低軌道自律飛行型モジュールシステム技術」の交付決定を受け、2025年より「日本モジュール」の本格開発を進めており、2030年以降のポストISS時代の宇宙利用における持続可能なエコシステム形成を目指している。
これまでの地上での結晶成長プロセスにおいては、「重力起因の物理的制約」が、デバイスの電力効率向上や歩留まり改善を阻むボトルネックとなっていた。
熱対流による組成不均一。加熱時に生じる密度の高低差による自然対流が、ドーパント分布の不均一や不純物混入を誘発する。
静水圧による構造歪み。自重による応力が結晶格子内の転位や欠陥を誘発し、耐圧特性を低下させる。
容器壁からの汚染。高温成長プロセスにおいて、ルツボなどの接触部から不純物が混入し、キャリア移動度が低下する。
宇宙空間の「微小重力」環境は、地上では排除できない対流や結晶欠陥の生成を極限まで抑え込むことができる。これにより、極めて高品質な結晶性を誇る化合物半導体の結晶成長が可能になる。
この「究極環境」を利用することで、地上製造では到達不可能なレベルの性能(高純度・高効率・高耐久性)を持つ化合物半導体の実現が期待される。
世界の化合物半導体市場は、2024年の約18兆円から2033年には約26兆円に拡大すると言われている。成長を牽引する理由として、AI(人工知能)関連の需要拡大に伴うデータセンター向けの高速光通信デバイス(レーザーダイオードなど)や省電力電源への需要、電気自動車(EV)や自動運転車の普及による次世代パワー半導体や光センサー(LiDAR)をはじめとする通信半導体の搭載量増加などがある。
また、スマートフォン(5G/6G対応の高周波デバイス)、家電、産業機器など、あらゆる次世代IT・IoTデバイスに化合物半導体が組み込まれ、市場の裾野はさらに広がりつつある。
そして、半導体は経済安全保障上の重要性が高まっており、各国が巨額の政策支援を行っていることから製造能力の増強や研究開発が加速している。BEAMおよび同社等は地上で製造できない高性能半導体をこれらの市場に提供していく計画となる。
「宇宙基本計画」(令和5年6月13日閣議決定)に基づき、日本が世界に誇る技術の集大成として、宇宙技術戦略が進められている。日本低軌道社中が開発する日本モジュールでは様々な技術実証や商業利用が計画されており、同社は材料関連の中でも、特に市場規模、日本における産業基盤、および技術優位性のある化合物半導体における「微小重力を活用した次世代製造プラットフォーム」を共同で構築し、2030年以降に商業宇宙ステーションに接続される日本モジュールにおいて化合物半導体製造の実現を目指す。
2026年06月26日
