理化学研究所らが光電流応答を観測 ハライドペロブスカイト薄膜作製に成功

2026年06月25日

ゴムタイムス社

 理化学研究所創発物性科学研究センター強相関界面研究グループの三木孝馬研修生、中村優男上級研究員、川﨑雅司グループディレクター、創発光物性研究グループの小川直毅グループディレクター、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター、最先端研究プラットフォーム連携事業本部強相関材料環境デバイス研究チームの岡本敏チームディレクターらの共同研究グループは6月23日、強誘電性を示す鉛フリーハライドペロブスカイトの薄膜において、可視光域での巨大な光電流応答を観測したと発表した。
 同研究成果は、環境調和性の高い次世代の光電変換材料の開発を加速するものと期待されるものと期待される。
 今回、共同研究グループは、強誘電性を示すハライドペロブスカイトCsGeI3の高品質な薄膜の作製に成功した。さらに、この薄膜において、電子波動関数の量子幾何学効果に由来する「シフト電流」が、既報物質を1桁以上上回る巨大な光電流応答を示すことを明らかにした。
 同研究は、科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に掲載された。
 同研究に先立ち、共同研究グループは、世界でも数少ないハライド薄膜の成長に最適化した分子線エピタキシー装置を独自に開発した。この装置を用いて、CsGeI3の薄膜成長を行った結果、結晶方位がそろった高品質なエピタキシャル薄膜の作製に初めて成功した。
 作製した薄膜試料に対し光を照射し、外部電圧を加えない条件で発生する光電流(無バイアス光電流)を測定した。光電流は、CsGeI3のバンドギャップに対応する約1・6電子ボルト(eV)から立ち上がり、2・9eV付近で符号が正から負へと反転し、その後3・0eV付近で負のピークを示した。
 このような光電流の符号反転は、電極近傍の電場などによって生じる通常の光電流では説明できず、シフト電流に特徴的な振る舞いとなる。さらに、先行研究での第一原理計算によって得られたシフト電流のスペクトルと比較したところ、符号反転や負のピークなどの特徴が実験結果とよく一致した。これらの結果から、同研究で観測された光電流がシフト電流であることが明らかになった。
 また、薄膜に電場を加えて強誘電分極の向きを制御すると、電場の向きに応じて無バイアス光電流の大きさが可逆的に変化することも確認した。この結果は、観測された光電流がCsGeI3の強誘電分極と密接に結びついたシフト電流であることをさらに裏付けるものとなる。
 さらに、CsGeI3薄膜で観測されたシフト電流応答を、これまで報告されている代表的な物質と比較したところ、可視光域で性能指数が既報値を1桁以上上回ることが分かった。この結果は、CsGeI3が極めて高いシフト電流発生能を持つことを示すものであり、強誘電性ハライドペロブスカイトが次世代光電変換材料の有力な候補であることを明らかにした。
 同研究では、鉛を含まない強誘電性ハライドペロブスカイトCsGeI3の高品質エピタキシャル薄膜を作製し、可視光域で既報物質を1桁以上上回る巨大なシフト電流を観測した。同成果は、強誘電性と可視光吸収を兼ね備えたハライドペロブスカイトが、量子幾何学に基づく新しい光電変換材料として高い可能性を持つことを示している。
 今後は、薄膜の結晶性、歪(ひず)み、強誘電ドメイン構造を精密に制御することで、シフト電流のさらなる増強や電場による光電流制御が期待される。また、鉛を含まない環境調和型材料として、次世代太陽電池、次世代高速通信用光検出器、テラヘルツ帯高速光電変換デバイス、非線形光学素子への応用展開が期待される。

強誘電性ハライドペロブスカイト薄膜への可視光照射による光電流発生の概念図

強誘電性ハライドペロブスカイト薄膜への可視光照射による光電流発生の概念図

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