レゾナックがISSで評価実験 誤動作低減する半導体封止材

2025年06月20日

ゴムタイムス社

 レゾナックは6月19日、現在開発している、宇宙線に起因する電子機器の誤動作(ソフトエラー)を低減する半導体封止材の評価実験を、2025年秋をめどに国際宇宙ステーション(ISS)で開始すると発表した。
 同実験は、米民間宇宙企業Axiom Spaceに委託しており、同社は、2025年4月に、評価用半導体チップを搭載した動作評価装置を材料暴露実験装置(MISSE)に設置した。同装置は、2025年秋に打ち上げられ、ISSでの評価が開始される予定となる。
 同封止材によるソフトエラー低減効果が確認されれば、既存の宇宙向け半導体の性能向上や、地上で使われている半導体の宇宙向けへの適用などが期待される。
 宇宙向けプロセッサの演算能力向上においては、宇宙線に起因するソフトエラーが課題の一つとなっている。
 この課題に対し同社は、宇宙線に含まれ、ソフトエラーを引き起す中性子を吸収する材料を配合した半導体封止材を試作した。地上での評価実験では、最も基本的な回路(フリップフロップ回路)において、ソフトエラー率を約20%低減できた。そして、さらに実験を進めるため、同社は、同封止材を使用した半導体チップをISSへ輸送し、船内外のMISSEにて半導体を動作させた状態でソフトエラー低減効果を評価することにした。
 打ち上げや実験は、同社からの委託により、Axiom Spaceが支援し、実施する。地上試験では再現できない宇宙空間の放射線スペクトルの影響を検証し、宇宙向け半導体材料に求められる特性を特定するとともに、高性能な半導体材料開発において重要なデータを取得することを目指す。
 同実験において、同封止材のソフトエラー低減効果が確認されれば、地上で使われている半導体チップをほぼそのまま宇宙向けとして適用でき、宇宙向け半導体の製造コスト削減、機能向上に寄与できると想定している。ソフトエラーを低減する手法は他にもあるが、封止材でその効果を得られれば、非常にシンプルであり、周辺設計のコスト削減にも寄与できる。
 同社では、パーパスである「化学の力で社会を変える」を実践するために従業員が手上げ制で活動するコミュニティ「REBLUC(Resonac Blue Creators)」を2022年に設立した。同実験は、REBLUCの中で、宇宙関連材料を通じた社会貢献を志すメンバーが集まり、推進している。
 今後は、人工衛星、宇宙データセンター、月面基地、月面ローバー向けの半導体材料への展開を目指す。

評価用の半導体チップを搭載した動作評価装置

評価用の半導体チップを搭載した動作評価装置

動作評価装置が取り付けられた材料曝露実験装置

動作評価装置が取り付けられた材料曝露実験装置

封止材

封止材

 

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