東洋紡が大塚化学と共同開発 分離膜デバイスで生産向上

2025年06月19日

ゴムタイムス社

 東洋紡は6月16日、大塚化学とのアライアンス契約に基づく取り組みの成果として、抗体医薬品製造プロセスにおける精製工程向けの分離膜デバイスを新たに共同開発したことを発表した。
 4月末より、医薬品メーカーや研究機関等向けにサンプル提供を開始している。

 このほど新たに共同開発したのは、大塚化学の精密合成・重合技術を活用した荷電性ポリマーを、同社の微細加工・製膜技術により中空糸膜化した、抗体医薬品の製造プロセスにおける精製工程向けの分離膜デバイス。主な分離対象となる陰性荷電性物質の吸着性能に優れた特殊ポリマーと、中空糸膜の孔径を内側と外側とで非対称にする独自の膜構造を採用。この分離膜を通して抗体医薬原液をろ過するだけで、細胞片や凝集タンパク質、負電荷を帯びた不純物といった分離対象となる不要物質を除去するとともに、目的の抗体を効率的に取得できる。従来主流のカラムクロマト方式では、抗体の結合、洗浄、溶出、精製といった煩雑な作業ステップが必要だったのに対し、本製品では一度の精製・回収作業で済ませられるため、作業工程数を4分の1に削減可能、作業時間の大幅な短縮が期待できる。また、大型の洗浄装置や廃液処理設備を設置する必要が無くなるため、工程の省スペース化にも役立つ。さらに、非対象の膜構造は目詰まりの抑制にも効果的で、高い処理液量を維持しながら膜の交換頻度の低減にも寄与するため交換作業に掛かる労務費の削減が見込めるなど、生産性の向上に貢献する。

 同社は今後、本製品を製薬メーカーの試験生産プロセス用として積極的に展開を図りながら、2025年度中に量産を開始する予定。また、理化学機器メーカー向けのサンプル提案に注力するなど本製品のさらなる採用拡大に努めることで、2030年度に医薬品向けプロセス膜用途で数十億円規模の売上を目指していく。

分離膜デバイスに充填される中空糸

分離膜デバイスに充填される中空糸

分離膜デバイスに充填される中空糸の断面写真

分離膜デバイスに充填される中空糸の断面写真

分離膜デバイス外観

分離膜デバイス外観

 

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