東レは3月10日、日本大学医学部附属板橋病院 内科学系循環器内科学分野主任教授・部長の奥村恭男氏を研究代表者とした、心電図検査サービスの有用性評価についての多機関観察研究を開始したことを発表した。
不整脈のひとつである心房細動は年齢とともに有病率が増加することから、超高齢化社会である日本では今後さらに患者が増加することが予測されている。心房細動を有すると脳卒中や心不全を発症するリスクが高まることが知られており、長時間の心電図を記録することにより心房細動を検知する取り組みが広がっている。
同社は以前から繊維技術を活用した皮膚に優しいドライ電極を備えた着衣型の心電用電極を開発し、長時間の心電図検査の実現に貢献してきた。この心電用電極を用いたウェアラブル心電図測定システムは着用時に粘着剤が不要で、受診者自身が着用するのみで心電図記録のための適切な位置決めが可能。また、着衣型心電計は、発作性心房細動の診断の際に使用が薦められている心電計の一つ。
東レ・メディカルではこのウェアラブル心電図測定システムを用いた「hitoe BK 心電図検査サービス」を提供している。本サービスは、ウェアラブル心電図測定システムが受診者自身で着用できる特徴を利用し、心電図記録キットを受診者の自宅に直接配送するホルター型心電図検査向けの心電図検査受託サービス。
まず、医療機関からの検査依頼を受け、東レ・メディカルから受診者に心電図記録キットを配送する。受診者は同梱の説明書を参考に自身でウェアラブル心電図測定システムを着用し、日常生活中の心電図を記録する。着用期間終了後、受診者は心電図記録キットを返送する。その後、東レ・メディカルは心電図データから心房細動に特化した解析レポートを作成し、医療機関に納品する。本サービスは、心電図記録器を購入することがなく、必要時に検査が可能で、受診者の来院回数の軽減と来院に伴う費用と時間の負担の軽減も期待される。
今回の研究では、日本大学医学部附属板橋病院ほか複数の医療機関における通常診療において、本サービスによる心電図検査が必要であると医師が判断した患者を対象とし、受診者が心電図を記録した期間に対する心電図の解析が可能な時間を評価することで、日常生活中の長時間の心電図検査に本サービスを利用することの有用性を検討する。本研究は2026年10月31日まで実施される。