年頭所感 横浜ゴム 山石昌孝社長

2022年01月07日

ゴムタイムス社

1.2021年振り返り

 第1四半期は、日本での降雪もあり新型コロナウイルス感染拡大の中、収益的にはまずまずの結果となりました。しかしながら第2四半期は、後半に原材料価格の高騰と、世界的なサプライチェーンの混乱によるコンテナ不足の影響を受け減速し、さらに第3四半期は、半導体や部品不足による自動車メーカーの大減産を受けて、大変厳しい決算となりました。第4四半期も原材料高、コンテナ不足が続く中、更に中国の電力不足による生産の一部停止といった逆風もありましたが、11月中旬より自動車メーカーの生産が戻ってきたのは明るい兆しと考えています。

 こうした経済環境の中、第3四半期までの当社のタイヤ事業は、経営環境の変化に迅速に対応した結果、売上収益、事業利益とも前年同期を上回ることが出来ました。新車用タイヤについては、国内、北米、中国などで自動車メーカーの減産影響を受けましたが、売上収益、事業利益とも前年同期を上回りました。市販用タイヤについても、高付加価値品の拡販につとめ、北米、欧州などで販売を伸ばした結果、売上収益、事業利益とも前年同期を上回ることが出来ました。

 MB事業についても、売上収益、事業利益とも前年同期を上回ることが出来ました。ホース配管事業は、市況の回復により建機向け油圧ホースの販売が好調で、売上収益、事業利益とも前年同期を上回りました。工業資材事業では、コンベヤベルトは国内販売が好調で増収増益でしたが、海洋商品は減収減益でした。航空部品事業は、民間航空機向けの需要減退の影響を受け、減収減益となりました。

 ATGについては、原材料や、海上運賃の高騰による影響がありましたが、農機メーカー向け、市販向け共に、旺盛な需要を背景に販売が好調で、売上収益、事業利益とも前年同期を上回り、過去最高となりました。

 次に、2021年度における中期経営計画『YOKOHAMA Transformation 2023(YX2023)』(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)の進捗についてご説明いたします。

 タイヤ消費財において、新車用向けでは、プレミアムカーへの「ADVAN」「GEOLANDAR」の新車装着に注力し、市販用向けでは、2021年を「ヨコハマ冬の陣」と位置付け、国内では4年ぶりとなる新商品「iceGUARD 7(アイスガードセブン)」を発売、海外では欧州向けウィンタータイヤ「BluEarth Winter V906(ブルーアース・ウィンター・ブイキューマルロク)」を発売しました。

 この1月から11月までの、「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」の販売本数構成比率は、前年の40%に対し、42%まで引き上げることができました。また、18インチ以上のハイインチタイヤの販売本数構成比率も、前年の18%に対し、20%まで引き上げることが出来ました。

 タイヤ生産財では、「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」として、タイヤのデジタル化による情報サービスの強化のため、先進センサータイヤの開発を進めております。その一環として8月にはオリックス自動車様と、10月にはゼンリン様の協力の下、タイヤ空気圧の遠隔監視システムなどの実証実験を開始しました。

 加えて、タイヤ生産財事業の成長ドライバーであるOHT事業では、本年1月に、OHT事業の強化を目的に横浜ゴムのOHT事業、ATG、愛知タイヤ工業が「ヨコハマ・オフハイウェイ・タイヤ(YOHT)」の名のもと、グローバルでの事業統合を行い、当初目標であった売上高1,000億円を前倒しして達成する見込みです。

 また8月には、旺盛な需要への対応として、インドに建設中の新工場の生産能力を当初計画の2.2倍に増強することを決定しました。

 ホース配管事業では、中国建機メーカーへのOEM納入や補修市場に対応すべく、中国工場の生産能力を現在の3倍に増強することを決定しました。ハマタイト事業については、4月にSika AGへの事業譲渡を決定し、予定どおり11月1日に譲渡を完了しました。

 人事戦略では、生・販・技・物の統合によるスピーディな意思決定と従業員の働き方改革を目的として、新橋本社と平塚製造所の統合を決め、3月に本社ビルを売却しました。尚、平塚への移転は、2023年3月末を予定しております。
 ESGでは、カーボンニュートラルの2050年に向けた行程表を策定いたしました。ますます厳しくなる各国政府やカーメーカー様からの環境要求に対応してまいります。詳しくは、来年2月の決算発表時に、ご説明いたします。
 さて、11月に公表しました修正値ですが、その達成は、「自動車メーカーの挽回生産」、「物流網の混乱」などの環境変化に対し、生・販・技・物が一体となり、いかに迅速に対応できるかに、掛かっていると考えます。足もとでは、日本の降雪量が「平年並みか多い」と見込まれますが、新型コロナウイルス変異株、オミクロン株の感染拡大が懸念されますため、最後の最後まで気を緩めず、公表値達成に向け、全社を挙げて対応をしていきます。

2.2022年の取り組みについて

 中期経営計画の2年目となる2022年は、「新型コロナウイルス」、「原材料価格の高騰」、「自動車生産の動向」、「物流網の混乱」などにより、変化の激しい経営環境が続くと想定されます。こうした経営環境の変化に対し、少しでも先手先手を打って、柔軟に対応していきます。

 タイヤ事業においては、高付加価値品「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」の比率を更に拡大してまいります。来年2022年はYX2023の「ヨコハマ夏の陣」とし、「ADVAN Sport V107(アドバン・スポーツ・ブイイチマルナナ)」「ADVAN NEOVA AD09(アドバン・ネオバ・エイディゼロキュー)」「BluEarth-RV RV03(ブルーアース・アールブイ・アールブイ・ゼロスリー)」などの新商品を集中的に市場へ投入して、拡販に取り組みます。また、日本を含む全世界の他社の動向を注視し、慎重に値上げの検討を進めてまいります。

 MB事業では、ホース配管事業および工業資材事業にリソースを集中することで収益を伴った成長を目指す一方、厳しい事業環境が続く航空部品事業については事業構造の変革を行ってまいります。

 ESGでは、自社の省エネ改善と再生可能エネルギーへの転換を進め、カーボンニュートラルを推進するとともに、サーキュラーエコノミーの取り組みも着実に進めてまいります。また、改訂コーポレートガバナンス・コードを受け、ガバナンスの改革も進めてまいります。

 最後となりますが、今年も残すところ3週間となりました。来年の皆様のご健勝とご清栄を祈念するとともに、変わらぬご指導、ご鞭撻を頂きますよう、どうかよろしくお願いいたします。

山石昌孝社長

山石昌孝社長

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