NEDO 有機ケイ素材料の原料の効率的製造技術を開発

2014年05月22日

ゴムタイムス社

 新エネルギー・産業技術総合開発機構は5月20日、NEDOプロジェクトにおいて、産業技術総合研究所が、テトラアルコキシシランを、効率的に製造する技術を開発したと発表した。
 テトラアルコキシシランは自動車用部材や太陽光発電用部材などさまざまな用途に使用される有機ケイ素材料の原料として有望。シリカとアルコールの反応によって、従来の金属ケイ素を経由する製造工程が不要になり、地球上に豊富に存在する砂から有機ケイ素原料を直接製造することが可能となった。
 この成果により、高機能な有機ケイ素部材の製造を省エネルギー化することで、同材料を用いた多様な製品の低コスト化に寄与することが期待される。
 テトラアルコキシシランは、工業的には、天然のケイ石(二酸化ケイ素が主成分)を出発原料に、多大な電気エネルギーを用いて高温で炭素と反応させることで金属ケイ素に還元し、これを塩素と反応させた後にアルコールと反応させる方法、もしくは金属ケイ素を直接アルコールと反応させる方法により製造されています。しかし、いずれの方法においても、金属ケイ素の製造工程を経由するため、典型的なエネルギー多消費プロセスとなっており、様々な有機ケイ素原料のコスト高の一因ともなっている
 一方、シリカ(二酸化ケイ素)から直接テトラアルコキシシランを得る方法として、シリカをアルカリ金属水酸化物などの触媒の存在下でジアルキルカーボネートと反応させる方法が知られている。この方法は、金属ケイ素を原料としないためエネルギー効率的に有利だが、比較的高価な化合物であるジアルキルカーボネートをシリカに対して少なくとも2倍量使用する必要があり、工業的製法としては経済性に課題があった。
 産業技術総合研究所・触媒化学融合研究センターは、金属ケイ素を経由しないテトラアルコキシシランの製造方法としてシリカにアルコールを直接反応させる方法に着目し、両者を反応させる上で有機脱水剤、二酸化炭素及び少量の触媒を共存させることにより、効率良くテトラアルコキシシランが生成することを見出した。
 今回開発した方法は塩素化合物を一切使用しないため、製品に塩素が混入する心配がないことも特長として挙げられる。
 同技術は、金属ケイ素を経由しない砂からの有機ケイ素原料の直接製造に道を拓くものであり、今後の有機ケイ素化学品・材料の製造における省エネルギーと製品の低コスト化、高機能化に寄与することが期待される。
 同技術の詳細は、5月22~23日に東京都千代田区の東京国際フォーラムで開催される第3回JACI/GSCシンポジウムで発表される。
 今後は、有機脱水剤や触媒を改良することで、反応の更なる効率化を図っていく。また、多様なケイ素源やアルコール種への適用性について検証を行うとともに、有機脱水剤の再生や触媒のリサイクルについての検討を進め、テトラアルコキシシランの現行製造法に対するコスト優位性を評価するとともに、スケールアップ検討も実施し、数年後の実用化を目指す。
 さらに同プロジェクトでは、今回の技術で製造されるテトラアルコキシシランから、シリコーン等の有機ケイ素部材の製造に用いられる様々な有機ケイ素原料を製造する反応プロセスや、それに必要となる触媒の開発を進めることとしている。

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