日本ゼオンは5月26日、Sino Applied Technologyと、SiAT社の総額2000万米ドル規模のシリーズC資金調達ラウンドを同社が主導し、資本参加することについて基本合意したことを発表した。今回の合意により同社は、SiAT社が計画する次世代リチウムイオン電池向けの単層カーボンナノチューブを用いた導電ペーストの生産能力拡大を支援する。
リチウムイオン電池は、電気自動車、ドローン、eVTOL航空機などの民生用途だけでなく、AIサーバーBBU、再生可能エネルギーESS、自動化ロボティクスなどの産業分野においても需要が急増している。また、単層カーボンナノチューブは、電池のエネルギー密度とサイクル寿命を大幅に向上させる材料として需要が高まっている。
同社は、2015年に世界で初めて独自のスーパーグロース技術を用いたSWCNTの量産に成功し、「高純度」「高比表面積」「高アスペクト比」を主な特長とするSWCNTを「ZEONANO」のブランドで製造・販売している。一方、SiAT社は20年以上にわたる電池用ナノ材料開発の経験を持ち、SWCNTを均一に分散させ安定した導電ペーストとして製品化する独自技術を有している。2024年以降、SiAT社はZEONANOを使用した導電ペーストを開発し、電池メーカーでのサンプル評価の結果、リチウムイオン電池の正極および負極に微量添加することで、エネルギー出力とサイクル寿命が向上することが確認されている。今後は、シリコン負極や高容量・高出力性能が求められる次世代のリチウムイオン電池における活用への期待が高まっている。
SiAT社は、今回調達する資金を用いて2030年までに導電ペースト生産能力を年間25000トンに拡大することを目指す。同社においても、SiAT社へのメインサプライヤーとして、日本国内でのSWCNT粉体の生産拡大を予定しており、CNT事業のさらなる市場開拓を推進していく。