旭化成、欧州で実証開始 食塩電解セルレンタルサービス

2023年12月06日

ゴムタイムス社

 旭化成は12月5日、欧州最大級のクロールアルカリ企業であるドイツのNobian GmbH(Nobian社)、欧州で6カ国10カ所以上の物流拠点を持つオランダのLOGISTEED Europe B.V.V.(LOGISTEED Europe社)とともに、欧州における食塩電解セルレンタルサービスの実証を開始することを発表した。
 同社のイオン交換膜法食塩電解プロセスは1975年に販売を開始して以来、45年以上にわたる実績とワンストップで供給できる食塩電解プロセス技術の幅広さにより、高い信頼を得ている。クロールアルカリの2022年の世界需要は約1億トンであり、そのうち同社は全世界で30か国、150工場以上(2023年11月現在)で採用され、その累積受注量は3000万トン(100%苛性ソーダベース)を超えるグローバルな実績のあるサプライヤーとなっている。
 イオン交換膜法食塩電解プロセスとは、イオン交換膜を使用して食塩水を電気分解し、塩素、水素および苛性ソーダを生産するシステム。このプロセスは、水銀やアスベストなどを使用するプロセスに比べ、省エネルギーである点が高く評価されている。同社の高い技術力を活かした低電圧膜と電解槽の組み合わせは、電解プロセスにおける電力消費量を減らすことで、CO2排出量の低減に貢献している。
 食塩電解セルレンタルサービスについては、近年、電池・電子部品向けの需要拡大やウクライナ情勢の影響を受け、食塩電解セルに用いられる貴金属の価格は高騰傾向にある。また、今後の水電解の普及に伴い、この傾向が継続・加速すると予測している。このような市場環境において、限りある貴金属資源をどう有効活用していくかという課題にクロールアルカリ業界は直面している。この課題に対し、同社は貴金属および金属のサーキュラーエコノミー実現の第1歩として、Nobian社・LOGISTEED Europe社とともに、欧州におけるセルレンタルサービスの実証を開始するに至った。
 これまで、同社の食塩電解プロセスのユーザーは、自身が所有する電解セルを補修する際に、電解セルを長期間補修拠点に預けておかなければならなかった。これにより、生産ロスが発生し、また生産ロス分を取り戻すために高負荷で運転を行うことで、電気代が余分にかかっていた。一方、同サービスを通して同社から代替品をレンタルすることで、生産ロスを回避でき、電気代も抑えながら操業を続けることができるようになる。また、代替品は同社の認定補修拠点にて都度メンテナンスされ、欧州の複数ユーザー間でリユースされる。
 さらに、遊休資産化しやすい予備品をユーザー自身で所有・メンテナンスする必要がなくなることで、ユーザー毎に予備品を持つ必要がなくなるため、欧州内で使用される貴金属のリデュースが可能となる。
 同実証では、環境配慮型の電解事業を展開する第一人者であり、同社と40年以上にわたるパートナーシップがあるNobian社と、運用課題特定とサービス内容最適化を探索する。さらに欧州にて30年以上の歴史を持つLOGISTEED Europe社を電解セルの保管拠点とし、ユーザーと保管拠点の間のリバースロジスティクス確立に向けた検討を進めて、2025年の本格事業化を目指す。
 今後は、サービス展開エリアをアジアや北米にまで広げるとともに、2020年2月に買収したRecherche 2000Inc.のシステム開発力と融合したさらなるサービスの高度化や、貴金属および金属のサーキュラーエコノミーの取り組みを、セルおよび電極のリユース・リデュース領域からリサイクル領域にまで広げることを目指していく。

セル交換のイメージ

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