ランクセス子会社が出展 ケムスペック・ヨーロッパ2023に

2023年05月29日

ゴムタイムス社

 ランクセスは5月25日、完全出資子会社で受託製造会社のサルティゴが、5月24~25日にスイス・メッセバーゼルで行われる、「Chemspec Europe 2023」に出展すると発表した。クライメート・ニュートラル(気候中立)な生産とネットゼロ・バリューチェーンへの道についての取り組みを紹介する。
 ドイツの特殊化学品メーカーである同社の完全出資子会社で受託製造会社のサルティゴは、「Chemspec Europe 2023」に出展し、持続可能な生産およびサプライチェーンに関連する活動や成功事例、今後の目標について紹介する。
 今回で36回目を迎えるファインケミカル品および特殊化学品に関する国際見本市は、2023年5月24日~25日にスイスのバーゼルで開催されている。
 サルティゴの生産戦略責任者であるヴィルフリート・ヤヴォレクは、「サルティゴとそのお客様は、デジタルトランスフォーメーション、バリューチェーン全体にわたる包括的な気候保護、持続可能な社会を目指した信頼性の高いサプライチェーンに積極的に取り組んでいる。これらすべてを必要なコスト管理を行いながら実現することは、非常に困難な課題となる。しかし、それは避けては通れない道である」と述べている。
 これは、レバークーゼンに本拠を置くサルティゴの中核事業である受託合成のみならず、サルティゴが製造および販売する幅広いファインケミカル品および特殊化学品にも当てはまる。グループの積極的な目標「サルティゴは、将来を見据えた気候保護と持続可能性の活動を通じて、グループ全体の積極的な目標の達成に重要な貢献を果たしている」と、サルティゴの最高経営責任者であるマイケル・ゾベル氏は強調する。
 同社は2040年までに、直接排出におけるクライメート・ニュートラルを目指している。サプライヤーや顧客と協力し、2030年までにスコープ3の排出量を2015年比で 40%削減することが目標となる。また、2050年までに、上流および下流においてサプライチェーン(ネットゼロ・バリューチェーン)全体のクライメート・ニュートラルを目指している。
 最終的には、2050年までに製品ポートフォリオ全体のクライメート・ニュートラルを目指す。
 さらなる持続可能性に向けたデジタル化として、サルティゴは、親会社である同社が開発した「プロダクト・カーボンフットプリント・エンジン」を使用して、自動化したプロセスにより製品のカーボンフットプリントを計算する。このソフトウェアは、ERP(企業資源計画)システムから既存データにアクセスし、これを気候関連の材料情報と組み合わせ、「ゆりかごからゲートまで(Cradle-to-gate)」(原材料の調達から工場出荷まで)のアプローチに基づいて、生産工程で発生する温室効果ガス排出量を計算する。
 これには、生産時、製品毎の原材料、消費エネルギー、操業用資材、物流、廃棄物処理による温室効果ガス排News Release出量などが含まれる。このツールは、製品のカーボンフットプリントの定量化に関するISO 14067規格に従い、TÜV Rheinland によって認証されている。
 このデータは、ライフサイクル評価の重要な基礎にもなっている。このようにして得られた情報は、サルティゴの顧客が独自の持続可能性目標を達成し、これを明確に文書化するのに役立つ。
 サルティゴはすでに、自社生産と購入エネルギー(温室効果ガス議定書に基づくスコープ1および2)からの排出量を非常に正確に記録することができる。
 サルティゴのキーアカウント管理責任者であるアンドレ・グロスマン氏は、「サルティゴは、すべての製品のカーボンフットプリントを確実に導き出せるように、原材料、廃棄物処理、外部物流に関するスコープ3排出量のデータベースを継続的に拡張および改善している」と述べている。
 原材料の調達先、製品ポートフォリオ、生産量は、季節や市場によって頻繁に変動するため、これは複雑な作業となる。しかし、全排出量の約60%を占めるのは約20種類の物質に過ぎず、その多くは無機原料となる。
 「再生可能エネルギーで作られた塩素、水酸化ナトリウム、水素を使用することで、2023年5月以降のカーボンフットプリントは飛躍的に改善されるだろう」と、グロスマンは述べている。
 サルティゴの成功は、合成プロセスの開発と最適化に関する数十年にわたる専門知識に基づいている。同時に、革新的な生産方法は持続可能性を高める上で大きなポテンシャルをもたらすため、顧客からも一層の注目を集めている。
 「再生可能エネルギーや原材料の使用と並んで、これは我々の生産活動をより持続可能なものにするための、もう1つの決定的な要因である」と、サルティゴの新規事業開発および内部事業責任者であるギド・ギフェルズ氏は説明する。
 2005年にノーベル賞を受賞した金属触媒メタセシスのような現代の反応形式は、高度に選択的かつ穏やかな条件下で行われ、多くの場合、複雑な生成物に対する短くて単純な合成経路を可能にし、高い純度で提供する、という点で優れている。これにより、反応における原料やエネルギーの使用が効率化されるほか、生成物の処理や分離が容易になる。
 また、廃棄が必要な副産物の発生も少なくなり、廃棄物の削減にもつながる。オレフィンメタセシスの現在の応用例として、農業用フェロモンの製造が挙げられる。これは、植物を保護するための高効率で選択的かつ無毒な化合物であり、害虫の繁殖を妨ぐ。
 メタセシスなどの効率的な合成方法により、現在では大規模にコスト効率良く製造および使用できるようになっている。
 そこでサルティゴは、顧客の要望に応えて、ヨーロッパのブドウガ(Lobesia botrana)の雌が分泌する特定のフェロモンである、(E・Z)-7、9ドデカジエン-1-オール-アセテートを数t規模で生産している。
 果実栽培やワイン醸造の環境において、このエステルが十分量放出すると、その種の雄は雌を見つけられずに交尾することができなくなる。この「錯乱テクニック」により、ブドウガの被害をしきい値以下に抑えることができる。この環境に優しい方法は、ドイツの複数の州で政府から補助金を受けている。
 メタセシス反応は、再生可能原料から医薬品有効成分、芳香族物質や芳香剤、脂肪酸誘導体を製造する際にも利用している。このような背景において、新しい触媒や改良された触媒のターゲット開発は、新たな可能性を継続的に切り開いている。
 カーボンフットプリントとライフサイクル評価により、サルティゴのユーザーは、気候中立性と環境適合性の向上に向けた正しい判断を行うことができる。
 メタセシス反応に関する5年以上の実験室および操業での実績は、受託合成に関してサルティゴの専門家の助けとなっている。12m3のスケールにおいて、(一部は敏感な)触媒やエチレン流の取扱いから、平衡反応の標的制御、生成物の緩やかな隔離まで、その全てを行っている。

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