出光興産がHC社と 水素製造事業化検討開始

2023年04月17日

ゴムタイムス社

 出光興産は4月13日、2021年11月に出資を実施したテクノロジーを活用したエネルギートランジション関連事業に特化した北米のファンド「Azimuth V Energy Evolution Fund」を通じた出資先であるH-Cycle社(HC社)と協働し、本年4月に都市ごみ等廃棄物を原料とした国産クリーン水素製造の事業化検討を開始したと発表した。
 カーボンニュートラル社会を実現する次世代エネルギーとして、燃焼時にCO2を排出しない水素の大規模活用が期待されているが、日本ではその調達の多くを輸入に頼らざるを得ず、活用は臨海部のプラント等が中心となると見込まれている。
 水素のさらなる普及・活用の実現においては、安価な水素原料の確保、大量製造・大量輸送を可能にするサプライチェーンの構築など「供給の低コスト化」が課題となっている。
 同社とHC社がこのたび事業化検討を開始した水素製造は、日本国内で排出される都市ごみなどの廃棄物を原料とし、HC社が日本で独占的に展開する権利を持つプラズマによるガス改質を用いたガス化改質炉を使用し、廃棄物を高効率で水素に変換する手法となる。
 検討する事業の特長の1つ目は、国産資源である廃棄物を原料として活用することで、国産のクリーン水素を製造・供給できるという点。
 従来の水素製造では天然ガス等の化石燃料が原料としている。廃棄物による製造においては、化石燃料を原料として使用する必要がない。
 本ガス化改質炉では、家庭から出る一般ごみに限らず、さまざまな廃棄物を原料として処理することが可能となる。
 廃棄物に含まれる生ごみ等のバイオマス原料は、水素製造時の CO2排出を相殺することから、従来の水素製造に比べCO2排出量の少ない製造方法と言える。
 さらに、製造過程で発生する高濃度CO2をCCS(U)によって貯留・活用することで、より一層クリーンな水素製造が可能となり、廃棄物処理に伴うCO2排出削減にも貢献できる。自治体との連携により、廃棄物を原料とした地産地消での水素製造が可能となる。
 2つ目は、各地域の廃棄物処理施設として本ガス化改質炉を設置して廃棄物処理をするとともに水素を製造することで、水素供給時の輸送コストの低減を実現し、地産地消型のクリーン水素供給拠点を展開することができるという点。
 効率的な廃棄物処理技術の普及と「エネルギーの地産地消」の実現を目指す。
 製造するクリーン水素は、産業用途や燃料電池車などのモビリティ用途のみならず、合成燃料の原料としての活用も想定する。
 同社は今後、各地域の自治体、設備運営・保守等を担うパートナー企業などの協力も得て製造事業の実用化検討を進め、1日当たり、約200~300tの廃棄物を処理して水素を製造する初期プラントを2030年代前半に建設することを目指す。
 HC社は2021年にカリフォルニア州で設立されたスタートアップ企業。革新的な廃棄物処理システムを利用して、都市ごみなどの廃棄物から再生可能で低炭素な水素を製造する予定となる。HC社は、2020年代半ばから後半にかけての商業運転を目指し米国西部で複数のプロジェクトを開発中であるほか、日本や韓国でもパートナーシップを結んでおり、20億米ドルの投資可能性を見込んでいる。
 同社は 2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、2030年ビジョン「責任ある変革者」、2050年ビジョン「変革をカタチに」を掲げている。
 昨年11月に発表した中期経営計画(対象年度2023~2025年度)では、「一歩先のエネルギー」「多様な省資源、資源循環ソリューション」「スマートよろづや」の3つの事業領域の社会実装を通して「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たす。
 同検討は3つの事業領域のうち「一歩先のエネルギー」及び「多様な省資源、資源循環ソリューション」の開発と社会実装に向けた取り組みと位置付けている。

検討を開始した水素製造のイメージ

検討を開始した水素製造のイメージ

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