年頭所感 丸紅 柿木真澄社長

2023年01月11日

ゴムタイムス社

1.はじめに
 皆さん、あけましておめでとうございます。

 丸紅グループの社員、並びにご家族の皆さんに、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 皆さんは、年末年始はゆっくりと休まれたでしょうか。新型コロナウイルスの影響により、引き続き一部の国や地域では移動や活動が制限されるなど、仕事のみならず生活の面でも影響があると思いますが、こうして皆さんと新年を無事に迎えることが出来て大変嬉しく思います。

2.当社を取り巻く環境について
 昨年を振り返ると、新型コロナウイルスのみならず、地政学リスクの高まり、世界的なインフレと金融引き締めの影響に伴う景気後退懸念など、先行きの不透明感がより一層強まった一年でした。そのような状況においても、皆さん一人ひとりの並々ならぬ努力により、2022年度の連結純利益は、史上最高益であった2021年度を上回り、2期連続で最高益となる見通しです。改めて日々尽力頂いている皆さんに心より感謝申し上げます。

 2023年の世界情勢についても、引き続き先行きが不透明であり、事業環境が目まぐるしく変化する状況が続くと予想されます。基本的には世の中の先行きは不透明なものですので、何が起こってもおかしくない、と心構えをしっかりしていれば間違いはないと思います。

 欧米を中心とした、高いインフレを抑制するための金融引き締めの影響や、ゼロコロナ政策の緩和の難しさに直面する中国経済の下振れリスクなどにより、世界経済は停滞する可能性が強まっています。
 また、安全保障を巡る問題は一層複雑化しており、いつどこで顕在化するか予見できません。ウクライナ情勢の今後の進展や、米中関係、台湾問題などの動向には引き続き注意が必要です。特に米中関係は、経済の緊密な相互依存と先端技術での競争が混在する複雑な構図に転じており、世界的にも経済と安全保障の課題が重なる分野が大幅に拡大しています。我々としても以前にも増して、経済安全保障という重要課題に注意して向き合う必要があります。

 その他にも、脱炭素のみならず、循環経済への移行、水資源・生物多様性の保全、人権の尊重、持続可能なサプライチェーンの構築など、サステナビリティへの取り組みもより一層重要性が高まっています。サステナビリティに真剣に取り組まなければ、もはやビジネスとして成立しない時代になっています。
 一方で、昨年11月にエジプトで開催されたCOP27では、各国の意見の隔たりにより、温室効果ガスの排出削減や、化石燃料の段階的削減に向けた議論が難航したことや、米国の一部の州や共和党による反ESGの動きから分かる通り、サステナビリティへの取り組みは、地域やビジネス領域によって一様ではありません。
 また、エネルギー安全保障の問題が顕在化した今、移行期特有の社会課題も避けては通れないテーマとなっており、地球環境に対してポジティブなインパクトを与えられる解決方法を、丸紅グループのみならずステークホルダーと一緒に考えていく姿勢が我々には求められています。

 繰り返し申し上げていますが、このような先行きを見通すことが困難な時代だからこそ、ビジネスのチャンスがあります。足元の業績が好調であることは喜ばしいものですが、今一度気持ちを引き締め、事業環境の変化をしっかりと見極めた上で、危機感を持って取り組んで頂きたいと思います。皆さんには積極的に現場に足を運び、顧客やパートナーなどの状況の把握に努めて頂きたいと思います。その上で立ち止まっていないで走り出すことが必要になってきているのではないでしょうか。
 顧客の皆様が困難な状況に直面した時、声を掛けてみよう、相談してみよう、と真っ先に思い浮かべる相手が丸紅グループでなければなりません。「世の中のギャップを埋め続ける永遠のパートナー」として、立ち返るべき原点としての社是「正・新・和」の精神に則り、社会・顧客の課題と向き合い、新しい価値を生み出していく、それが丸紅グループのミッションです。

3.中期経営戦略GC2024の取組みについて
 次に、中期経営戦略GC2024の推進にあたり、皆さんにお願いしたいことについてお話させて頂きます。

 GC2024は「戦略実践の3年間」と位置付けています。これまで述べた通り、丸紅グループを取り巻く環境は、非連続な変化、既成概念のディスラプションやイノベーションが顕在化・加速化する極めて不透明な世界となっており、まさに丸紅グループのミッションを実践すべき時です。先程申し上げたように走り出して下さい。そこにはリスクが存在しますが、恐れずに突き進むことも必要です。
 2023年は、これから申し上げることを意識しながら日々の業務に取り組んで頂きたいと思います。

 まず、「既存事業の強化と新たなビジネスモデルの創出の重層的な追求」についてです。
 足元の好業績は、既存事業における商品市況の高騰などの恩恵を大きく受けています。足元が好調な事業であっても、その状況に安住していると将来座礁資産化してしまうリスクを孕んでいます。既存事業の強化と新規ビジネスの創出を目指し、スピード感を持って積極的に新たな仕掛けに取り組んで頂きたいと思います。新しいことへの挑戦には勇気が必要ですが、変化することを恐れず、今までにないアイディアを是非提案して下さい。リスクを見切って下さい。既存の枠組みにとらわれず、自由に取り組んで頂きたいと思います。

 次に「グリーン戦略」についてです。
 既存のグリーン事業は強化・拡大を進めますが、新規のグリーン事業とグリーン化の推進は中長期的な取り組みです。関連する政策や技術も未確立なものが多く、戦略の実践は容易ではありませんが、一人ひとりがグリーンというコンセプトを意識して、一歩ずつ前に進めて頂きたいと思います。自らがグリーンのトップランナーとなって、社会課題へのソリューションや新しい価値を提供することが出来れば、地球環境にポジティブなインパクトを与えることが出来、丸紅グループの長期的な企業価値向上に繋がります。

 GC2024がスタートする際に、各営業本部において今後の戦略を策定してから、既に1年が経過しました。時が過ぎ去るのはあっと言う間であり、目まぐるしい速さで事業環境は変化していきます。このスピードに乗り遅れないために、常に走りながら戦略をアップグレードし、着実に歩みを進めていきましょう。にわとりと卵の状況に陥りそうになったら勇気を持って選択して下さい。失敗しても結構です。決断せずに失敗しなかったというのは何も生みません。良くも悪くも経験を積み重ねて頂きたいと思います。

4.人財戦略について
 次に人財戦略についてお話します。

 人財は丸紅グループの価値の源泉です。皆さん一人ひとりが持てる力を最大限発揮することが丸紅グループの成長の鍵を握っています。多様なバックグラウンドをもつマーケットバリューの高い人財が集い、活き、繋がり、様々な知を掛け合わせて価値を創造する、そのような人財エコシステムを創っていくことが非常に重要と考えています。その過程に多様性の考えもしっかり組み入れます。

 GC2024では、丸紅グループ全体として、この人財エコシステムを進化させていきたいと考えています。
 具体的には、営業本部長やCS部長には、グループ会社の人財も含めたグループ人財戦略の観点から、グループ会社の経営トップとも十分に対話し、組織の成長に繋がる人財戦略を策定し、実践して頂きたいと考えています。特に適材適所は、人財の持てる力を伸ばし、引き出す上で最も重要です。それが組織の戦略実行力にも直結します。営業本部長とCS部長には、中長期的な企業価値向上の観点から、組織体制の再構築や人財の育成・ローテーションについて、2023年上半期に掛けてじっくりと考えて頂く予定です。それらを通して、注力領域への経営資源の最適な配分と、人財の更なる活躍が一層促進されることを期待しています。
 引き続き、多様な人財が活躍できる環境作りにも取り組んでいきます。

 昨年8月に「女性活躍推進2・0」を公表しました。
 女性が当社の経営やビジネスの意思決定により深く関わる状態を目指し、活躍し続けられる環境づくりに向けて、成長機会をより充実させ、キャリアパスを強固なものにする「タレントパイプラインの拡張」に一層注力するものです。

 環境の変化に適切に対応してくためには、人財の多様性を確保し、様々なバックグラウンドを持つ人財が活躍することが必要不可欠です。女性に限らず、人財の持つ様々な知見を活かし、価値創造に繋げられるような会社を目指して、歩みを進めていきます。

 5.最後に
 冒頭に申し上げた通り、GC2024の初年度となる2022年度は順調なスタートを切れました。ステークホルダーの皆様から丸紅グループに対する評価・期待が高まっていることも実感しています。ここから更に期待を超える成果を出し続けるためには、立ち止まることなく、社会・顧客の課題と向き合い、絶えず努力と創意工夫を積み重ねていくことが必要です。

 丸紅グループの更なる成長・跳躍に繋げると共に、経済・社会の発展と地球環境の保全に貢献する、誇りある企業グループを目指していきましょう。

 最後になりましたが、皆さん、健康にはくれぐれもご留意頂き、充実した1年を過ごして頂ければと思います。皆さんとご家族のご多幸とご健勝を祈念し、私の新年の挨拶とさせて頂きます。

 2023年も、どうぞよろしくお願い致します。
 ありがとうございました。

柿木真澄社長

柿木真澄社長

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