ポリエステルエラストマー「ハイトレル®」の新規機能グレード開発による応用展開

2021年02月25日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 多用化するエラストマーの用途展開と特徴

ポリエステルエラストマー「ハイトレル®」の新規機能グレード開発による応用展開

東レ・デュポン㈱ ハイトレル技術部 植村裕司

はじめに

 本報告では「ハイトレル®」の特長を活かし、さらに特性や価値を付与した新規機能グレードとして、耐熱性を高めた「高耐熱グレード」、意匠用途に適した「低変色柔軟グレード」と「透明グレード」、硬質樹脂や他素材との複合化にて部品の機能統合を可能にする「2色成形によるシール用途」について紹介する。

1.デュポンTM 「ハイトレル®」の特長

 「ハイトレル®」はデュポンが開発、上市したポリエステルエラストマーの登録商標であり、国内では東レ・デュポン㈱が製造、販売をしている。
ポリエステルエラストマーは熱可塑性エラストマーと総称される樹脂群に含まれ、その名が示すようにエラストマー的な性質、すなわち、ゴム弾性を示しつつ、熱可塑性を示す溶融成形かつリサイクル可能な材料である。
 「ハイトレル®」はポリブチレンテレフタレート(PBT)のような芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのような脂肪族ポリエーテルからなるソフトセグメントから構成されるが、ハードセグメントが結晶化することで加硫ゴムの架橋点に相当する拘束相を形成するためゴム弾性が発現する。
 ハードセグメントがPBTのような芳香族ポリエステルであるため、他の熱可塑性エラストマーに比べ高融点であり、また機械強度、耐熱性、耐油・耐薬品性、成形加工性に優れる。一方、ソフトセグメントを構成する脂肪族ポリエーテルは低温から高温まで広い温度域での柔軟性と、卓越した耐屈曲疲労性、反発弾性等の性能を付与している。また温度変化による弾性率変化が小さく、熱可塑性エラストマーの中でも使用温度領域が広い特長を有する(図1)。
 「ハイトレル®」 は射出成形、押出成形、ブロー成形などの成形加工法を用いることができ、材料自体の持つ特性を活かした機能部品として使用されることが多い。各種自動車部品、電気・電子部品、一般機器部品、ケーブル被覆やホース・チューブ、硬質樹脂やフィルムの改質材などの工業材料用途を中心に利用されている。また、ヘアブラシやモノフィラメントによる椅子張り、ゴルフボール等の生活に密着した製品にも使用が拡大している(図2)。

2.「ハイトレル®」の新規機能グレード、加工方法の提案

 「ハイトレル®」では、基本グレードに加え、成形性改良、摺動性改良、制電性、難燃性、耐湿熱性等の付与、ガラス繊維(GF)強化等、お客様の要望に対応した各種機能グレードをラインナップしている。更に上記機能グレードを進化させ、新規用途の可能性をお客様に提供できる新規機能グレードの開発、加工方法の提案にも力を入れている。

2.1 高耐熱グレード(開発材)
 「ハイトレル®」は近年、自動車用途にてエンジンルームにより近い部位への採用の他、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)などの次世代自動車関連部品への応用展開も多くの検討が行われている。これに伴い、従来に比べてより高い耐熱性を有する材料への開発期待は高まっている。
 一般的にハードセグメントとソフトセグメントで構成されている熱可塑性エラストマーは、ポリマーの性質上ソフトセグメント成分が多くなると柔軟性は高くなるが、耐熱性が低下する。そのため従来の材料では耐熱性と柔軟性の両立は困難であった。
 そこで、独自のポリマー組成の調整・改質技術により従来に比べて大幅に耐熱性を向上させたグレードを開発した。高耐熱グレードは表面硬さがショアーDにて37、40、50のラインナップ(HTD-962、HTD-963、HTD-854)を揃えている。一般物性を表1に示す。耐熱性は引張破断伸びが100%(絶対値)にまで低下する時間にて評価した。図3に処理温度と引張破断伸び100%までの時間との関係をアレニウスプロットにて示す。何れの高耐熱グレードも表面硬さのショアーDが55である既存グレードの

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