実務に役立つシランカップリング剤の基礎から応用まで

2021年02月02日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集2 シランカップリング剤の構造と使用例

実務に役立つシランカップリング剤の基礎から応用まで

ラテリアル事務所 中北一誠

1.はじめに
 シランカップリング剤は一般に図1のような構造をしており、無機物に反応する官能基(X)と、有機物に反応する官能基(Y)を1つの分子中に併せ持つ化合物で、無機物と有機物を橋渡し(カップリング)する薬剤の名称である。反応性が高いため、接着剤やペイント、ゴムエラストマー等様々な分野にて使用されており、その効果も幅が広い(図2)。
 本報では反応のメカニズムを理解した上で、使用に当たっての注意点やポイントを説明する。主なシランはケイ素原子を挟んで、アルコキシ基が3個、その反対側に3つのメチレン鎖があり、その先に有機官能基があるという構造をとっている。加水分解して無機物と反応するアルコキシ基側は無機物的に働き、有機官能基側は有機的に反応するのでこれらについて説明する。

2.加水分解基側の反応速度について
 はじめに加水分解基(X)側の反応メカニズムについて説明する。アルコキシ基と無機物との反応は実は2段階反応である(図3)。まず、アルコキシ基が加水分解し水酸基に変化する。その際にアルコールが遊離する。さらに、シランの水酸基が無機物の水酸基と脱水縮合にて反応する。ここでのポイントは2つある。1つは、一段階目の加水分解反応は水がないと反応が開始できないことである。従って、カップリング剤は水を遮断しておけば反応は進まず、比較的安定した物が多い。ただ、反応を進めるのに、大量の水が必要かというとそうでもなく、二段階目の脱水縮合反応にて水が遊離し、この水が再利用されることから、ごく少量の水(例えば空気中の湿気等)で十分反応が開始し、進行することになる。例えばシーリング材等の厚みのある用途でも、二段階目の脱水縮合から供給される水分で中まで反応が進行出来る。
 もう1つのポイントは一段階目の加水分解は

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