横浜ゴムがdotData社と共同開発 製造R&D支援のAIエージェント

2026年09月18日

ゴムタイムス社

 横浜ゴムは9月16日、dotDataと、製造業の研究開発(R&D)における技術者の仮説形成と解釈・判断を支援するAIエージェントの共同開発を開始すると発表した。実際の研究開発への本格適用に先立ち、必要となる機能や技術的な実現性を検証する取り組みとなる。
 同開発では、設計情報や実験報告書などの技術文書、技術者が蓄積してきた知見と、dotData社の「特徴量自動設計」技術が計測データから導き出す特徴量を組み合わせる。これにより、研究開発の目的や状況、制約などのコンテキストに応じて、AIエージェントが技術者に判断材料を提示する仕組みを構築する。
 AIエージェントは技術者に「正解」を示すものではない。Humanーinーtheーloop(人が判断に介在する仕組み)を前提に、複数の可能性や異なる観点からのコメント、留意すべきリスクを提示し、技術者の発想の幅を広げる。両社は、AIとともに考える経験の蓄積を通じて、人材の成長にもつなげていく。
 同開発で検証するのは、研究テーマの目的、対象、制約条件といったコンテキストを理解したうえで必要な情報を探索・整理し、次の4つの形で技術者を支援するHumanーinーtheーloopのAIエージェントとなる。
 1つ目は、設計情報や技術者の知見を踏まえる。設計情報、実験報告書、研究報告書などの技術文書に記録された情報や、技術者が蓄積してきた知見などを参照し、研究開発テーマの背景や過去の経緯を踏まえた検討を支援する。
 2つ目は、データから得られる特徴量を判断材料として提示する。dotData社の特徴量自動設計技術により、人があらかじめ想定した要因に限定することなく、計測データや実験データのパターンを幅広く探索する。こうして得られる特徴量は、データに基づく定量的な知見として機能する。これを設計情報や技術者の知見と組み合わせることで、人の経験や既存の仮説だけでは気付きにくかった関係性を、新たな仮説を考えるための判断材料として提示する。
 3つ目は、多様な観点からコメントやリスクを提示する。一つの結論に収束させるのではなく、材料、設計、解析、生産、評価といった異なる専門的観点や、既存の仮説とは異なる観点からコメントを示す。あわせて、「この解釈に別の可能性はないか」「どの条件が変われば、この関係は成立しなくなるか」といった、仮説を検証するための問いやリスクも提示する。
 4つ目は、最終的な解釈・判断を人が行う。技術者は提示された情報をもとに自ら仮説を立て、実験や解析によって検証し、その結果を再びAIエージェントとの検討に活用する。この反復的な対話により、仮説形成から検証、解釈・判断に至る研究開発サイクルを支援する。また、AIエージェントとの対話を通じて技術者が分析の目的や着目点を伝えることで、特徴量自動設計の実行に必要な操作や設定を支援する仕組みも検証する。データサイエンスの専門家だけでなく、技術者自身が必要に応じてデータから特徴量を探索できる環境を目指す。
 同社は、人とAIとの協奏によって製品・プロセス・サービスの革新と人の成長を目指すAI活用フレームワーク「HAICoLab」を推進している。HAICoLabを策定した2020年からは、その実践を支えるツールの一つとして「dotData」を活用し、タイヤ設計やゴム混合プロセスなどで、自動設計された特徴量に技術者が多角的な解釈を加えることで、新たな気付きや仮説を得る取り組みを進めてきた。
 今回の共同開発は、この取り組みをAIエージェントへと発展させるものとなる。技術者は、提示された特徴量やコメントをそのまま受け入れるのではなく、自らの専門知識や経験と照らし合わせて解釈・判断する。この経験を重ねることで、技術者自身が新たな視点を取り込み、思考・判断の枠組みである「スキーマ」を広げていくことも狙いとなる。両社は、研究開発プロセスを高度化する「仕組みの変革」と、技術者の発想力や判断力を高める「人材の成長」を同時に進め、製造業R&Dにおける人とAIの新たな協働モデルの確立を目指す。
 同社は、実際の製造業R&Dテーマへの適用を通じてAIエージェントを活用したHAICoLabの実践を重ね、人の発想力とデータ活用を組み合わせた研究開発プロセスのさらなる高度化を進める。dotData社は、特徴量自動設計によって導き出される定量的なコンテキストとAIエージェントを組み合わせ、製造業のR&Dへ幅広く適用するための技術開発を進める。研究テーマやデータの形態、開発フェーズが異なる多様な現場においても活用できる方式を確立し、専門性の高い業務領域における人とAIの協働を支えていく。

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