東北大学大学院環境科学研究科の大塚光陽大学院生、王真金助教、栗田大樹准教授、成田史生教授らの研究グループは7月15日、Astemoと共同で、高温多湿環境で劣化したエンジニアリングプラスチック(PBT・ポリブチレンテレフタレート)の強度を回復するリサイクル技術を開発したと発表した。
研究グループは、自動車部品や電子機器などに広く使用されているPBTに着目。PBTは、優れた機械特性や耐熱性を有する一方、高温多湿環境では、加水分解によって分子鎖が切断され、強度が大きく低下することが知られている。同研究では、このように劣化したPBTを再び高性能材料として利用するため、鎖延長剤PPDIを用いた分子鎖再結合技術を開発した。
まず、未劣化PBTを高温多湿環境で意図的に劣化させ、その後PPDIを添加して溶融混練を行った。PPDI 添加量を段階的に変化させながら力学特性、分子量、化学構造を詳細に評価した結果、最適なPPDI配合条件を明らかにした。この条件では、劣化によって初期比38%低下した引張強さが94%まで回復し、未劣化材に近い性能を実現した。さらに、破断伸びも大幅に回復し、元の材料と同様の延性挙動を示した。
FT-IR分析およびカルボキシル基の定量評価から、PPDIが劣化によって生じた高分子末端と反応し、新たなウレタン結合およびアミド結合を形成することで、切断された分子鎖を再結合していることを確認した。また、分子量測定により、強度回復と分子量回復が対応して進行することが明らかとなった。
さらに、同研究グループは、引張強さと分子量の間にFox–Flory型の理論式が成立することを発見。この関係はもともと高分子のガラス転移温度の説明に用いられてきた理論だが、本研究では強度回復過程にも適用できることを初めて実証した。これにより、分子量の変化から材料強度を予測できる可能性が示され、経験や試行錯誤に依存しない新しいリサイクル材料設計指針を提案した。
今後の展開については、同研究で示した設計指針は、PBTに限らず、分子鎖切断によって劣化する多くの熱可塑性樹脂へ展開できる可能性があります。今後、研究グループでは、リサイクル材料の性能を理論的に予測・最適化する「力学情報に基づく循環型材料設計」の実現を目指していくとしている。
2026年07月23日
