京都大学、東洋紡エムシー、及び情報通信研究機構は1月29日、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM:Advanced Research Infrastructure for Materials and Nanotechnology in Japan)が主催する令和7年度「秀でた利用成果」において、利用課題「超小型原子時計の量産化に向けたガスセル作製技術」が高く評価され、優秀賞を受賞したことを発表した。
ARIMは、全国の大学・研究機関が保有する最先端の計測、分析、加工プロセス設備、及びそれらに附随する高度な技術・ノウハウを、産学官の研究開発者に提供し、研究・開発を支援している。毎年度、実施された利用課題の中から、ARIMの活用・支援が大きな効果をもたらした成果、イノベーション創出に大きな影響が期待できる成果、産学官連携によりもたらされた成果を、「秀でた利用成果」として表彰している。
今回の受賞課題では、ARIMのハブ機関である京都大学ナノテクノロジーハブ拠点の共用設備を活用し、半導体加工技術を応用したシリコン微細加工(エッチング・接合)によって、原子時計の中核部品である「アルカリ金属封入ガスセル」(数mm角)を作製し、超小型原子時計の量産化に向けた基盤技術を確立した。
従来、ラックマウントサイズの原子時計にはアルカリ金属としてセシウムが使用され、セシウム原子が吸収する光の周波数を基準に1秒を定めている。セシウム原子時計は、2000万年に1秒しか誤差が生じない高い精度を有する一方で、小型化が困難であり、現状では主に人工衛星や通信基地局など限られた用途に使用されてきた。
本研究は、こうした原子時計をパソコンやスマートフォン、スマートウォッチといった汎用電子機器に展開することを目指し、総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発」の一環である「周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発」で実施された。京都大学、東洋紡エムシー、NICTは「アルカリ金属封入ガスセル」の作製に着手し、シリコン微細加工によるガスセル筐体の作製技術、ルビジウム源となる「ルビジウムアジド」の合成及びガスセル内に正確に封入する技術を開発することで、小型ガスセルの量産化に向けた基盤技術を確立した。
来たるBeyond 5G社会においては、自動運転、遠隔制御システムの普及により、デバイス間での高精度な時刻同期が不可欠となる。本研究成果を基盤とするチップサイズの超小型原子時計をIoT機器などのエッジデバイスや汎用電子機器に搭載することで、次世代社会インフラの実現に大きく貢献することが期待されている。


