日本ゼオンが台湾企業に投資 導電ペーストの生産拡大を支援

2025年11月06日

ゴムタイムス社

 日本ゼオンは10月30日、次世代リチウムイオン電池向けに単層カーボンナノチューブを用いて導電ペーストを開発する台湾スタートアップSino Applied Technology(SiAT)に投資したと発表した。なお、同件は2025年5月に締結した基本合意に基づく出資であり、同社は、SiAT社が計画する次世代リチウムイオン電池向けのSWCNTを用いた導電ペーストの生産能力拡大を支援するとともに、導電ペーストのマーケティング活動を共同で実施することを通じて、SWCNTの用途展開をさらに加速する。
 同社は、SiAT社の総額2200万米ドル規模のシリーズC資金調達ラウンドを主導し、8月に投資契約を締結した。
 また出資と合わせ、SiAT社に取締役を1名派遣し、SiAT社の導電ペーストの生産・販売面における拡大の支援を実施する。具体的には、SiAT社が2030年までに計画する次世代リチウムイオン電池向けのSWCNTを用いた導電ペーストの年間生産能力を5000tから2万5000tへと5倍に拡大させることを支援する。また、販売面においては、両社が連携してマーケティング活動を実施し、拡販を目指す。
 SWCNTを用いた導電ペーストは、カーボンブラックや多層カーボンナノチューブといった従来の導電剤を用いた導電ペーストとは異なり、優れた電気伝導性、機械的強度、化学的安定性を備えており、先進的なリチウムイオン電池組成においてますます重要性が増している。さらにSWCNTは、電池のエネルギー密度とサイクル寿命を大幅に向上させる材料として需要が高まっており、電気自動車、ドローン、eVTOL航空機などの民生用途だけでなく、AIサーバーBBU、再生可能エネルギーESS、自動化ロボティクスなどの産業分野においても需要が急増するリチウムイオン電池への活用の期待が大きい注目材料となる。
 同社は、2015年に世界で初めて独自のスーパーグロース技術を用いたSWCNTの量産に成功し、「高純度」「高比表面積」「高アスペクト比」を特長とするSWCNTを「ZEONANO」のブランドで製造・販売している。一方、SiAT社は20年以上にわたる電池用ナノ材料開発の経験を持ち、独自技術によりSWCNTを均一に分散させ安定した導電ペーストを製品化している。ZEONANOを使用したSiAT社の導電ペーストは多くの電池メーカーが興味を示し、評価が進んでいる。結果、エネルギー出力とサイクル寿命が向上することが確認され、詳細評価に進んでいる。
 同社はSiAT社のメインサプライヤーとして、日本国内でのSWCNT粉体の生産拡大を予定しており、CNT事業のさらなる市場開拓を推進する。

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