旭化成がドイツCAC社と協業 食塩電解プロセス商業運転開始

2025年09月04日

ゴムタイムス社

 旭化成は9月2日、世界30カ国・160工場以上で採用されているイオン交換膜法食塩電解プロセスのサプライヤーとして、同プロセスのエンジニアリングをリードする CAC Engineeringと協業し、ポルトガルの大手化学企業であるBondalti Chemicalsのポルトガル・Estarreja工場において、同プロセスの商業運転を開始したと発表した。
 3社は、同プロセスを構成するEstarreja工場に設置した9槽の電解槽のうち1槽を「実証実験槽」として活用し、通常運転と並行して実証試験を実施する。
 同社のワンストップソリューション、CACの高度なエンジニアリング技術、そしてBondaltiの熟練した運転技術を融合させることで、電力消費量のさらなる削減と資源の有効活用を図り、環境負荷の低減を目指した次世代の食塩電解技術の確立に取り組んでいく。
 同取り組みは、ポルトガル政府の「Recovery and Resilience Plan」の支援を受けており、Bondaltiが掲げる脱炭素目標の達成を後押しする。
 現在、EUにて適用が開始された「CBAM(国境炭素)」などの脱炭素規制強化や「CSRD(企業サステナビリティ報告指令)」による情報開示強化に合わせ、欧州のクロールアルカリ産業でも、製品の製造過程での電力使用量や資源効率まで含めた環境負荷が評価されている。さらに電力価格の高騰も重なり、電力消費の削減と資源の有効活用がこれまで以上に重要な課題となっている。
 こうした状況を踏まえ、3社は、実証実験槽の運用を通じたプラントの最適化に取り組む。同社は50年にわたる事業実績からの経験に加え、2020年に買収したRecherche2000が提供する運転監視システムやソフトウェア解析サービス、さらには新形状電極の開発技術までを組み合わせた包括的なソリューションを提供し、CACおよびBondaltiと連携して、欧州のエネルギー戦略に適応した運転条件の調整など、従来では難しいとされてきた新たな運転手法にも挑戦していく。
 また、同社が主導する金属リサイクルのエコシステム構築に向けた取り組みの一環とし て、今回の実証試験で使用した食塩電解セルと電極の金属リサイクルを実施する予定となる。
 3社は、この取り組みを通じて、食塩電解プロセスのさらなる省電力化と資源循環を実現し、持続可能な化学産業の未来に貢献していく。

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