産総研、AGCと共同開発 弾性接着剤で新素材 

2024年03月19日

ゴムタイムス社

 国立研究開発法人産業技術総合研究所の触媒化学融合研究センター下山祥弘研究員、永縄友規 主任研究員、中島裕美子特定フェローは、AGCと共同で、高機能弾性接着剤の原料となる新素材を開発した。
 弾性接着剤の原料となる変成シリコーンポリマーは、ポリマー構造の末端に位置するシリル基が水と反応することで架橋体を形成し、弾性を持つゴム状の硬化物。しかし、現在用いられている変成シリコーンポリマーは、末端構造のシリル化率は85%未満であり、これは硬化物の架橋構造に欠陥が多くなる原因とされ、硬化物が引っ張られたときに戻ろうとする力であるモジュラス性能の低下を引き起こす。
 新しく開発した素材は白金触媒を用いて、変成シリコーンポリマーを末端構造のシリル化率95%以上で製造する方法を開発した。この方法により合成される硬化物は、架橋構造に欠陥が少なく、従来の触媒を用いて合成される硬化物と比べ、50%伸長させたときのモジュラス性能が30%向上した。この結果、開発した白金触媒を用いて合成された硬化物が強い振動を受けても破断せずに形状を保持できる、高い伸縮耐久性を示すことを証明している。
 開発した反応は、触媒の使用量を原料の5ppmまで減らすことが可能。また、ベンチスケールで変成シリコーンポリマーを製造することができ、実用に向けた量産化の可能性を見いだせた。新技術で作製した変成シリコーンポリマーは、伸縮耐久性に優れた高機能弾性接着剤の原料として用いることができる。なお、開発した接着剤を、地震の振動などの強い外力が加わる建築材や車両材料の接着に用いることで、これら高耐久・長寿命化に貢献する。
 伸縮性に優れた弾性接着剤は、振動や材料の変形に耐えうるため、建築や車両用途向けに用いられている。弾性接着剤は、地震などの揺れに強く、耐久性に優れるなどの理由から、高い安全・安心性が求められる現代社会に必要不可欠な材料だ。産業界では、さらに強い外力による伸縮や振動にも耐久性のある超高機能弾性接着剤の開発が求められ、今後も世界的な市場の拡大が見込まれる。
 今後はAGCでのサンプルワークを開始するとともに、量産技術を確立し、数年以内に製品化を目指す。主な用途は建築や車両用途向けの接着剤、シーリング材だが、伸び物性を維持したまま高モジュラス性能を備えた同材料により、接着剤の強度や耐久性が向上するため、信頼性が求められる用途へも展開を目指す。

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