年頭所感 日本ゴムホース工業会 永德文彦会長

2024年01月01日

ゴムタイムス社

 昨年を振り返りますと、ロシア・ウクライナ問題に加え、イスラエル・ハマスの軍事衝突で地政学リスクが顕在化、国際情勢が一段と不安定化しており、不確実性が高まっているものと思います。世界的にみれば、中国のゼロコロナ政策解除後の景気回復が緩慢なペースにとどまっていることに加え、欧州の景気停滞、足元では堅調に推移している米国経済も先行き不透明感の高まりで、予断を許さない状況は変わらず、経済が元の水準に戻るには時間を要するものと思われます。
 さて、昨年の日本経済ですが、新型コロナ5類移行をうけて、経済活動は徐々に正常化しつつあり、内需を中心に持ち直し傾向にあると思います。昨年の4~6月期のGDP成長率は、前期比+1・1%(年率+4・5%)と2四半期連続のプラス成長となりましたが、12月8日に発表されました7~9月期のGDP成長率は、前期比-0・7%(年率-2・9%)と3四半期ぶりにマイナスとなりました。物価高の影響で個人消費が2期連続でマイナスになったことに加え、企業の設備投資が減少したことも主な要因です。足元では、主原料や資材価格の高止まり、円安、人手不足など各産業への影響も懸念されており、経済環境は依然厳しいものがあるものと思われます。
 このような情勢下、ゴムホース業界は、実体経済の動向を見据えながら、市場の変化と需要動向へ機敏に対応しつつ、継続的な変革に挑戦し続ける企業経営が肝要であると考えております。
 昨年のゴムホースの生産は、自動車用ホースが前年実績を上回るものの、その他用ホースは横ばい、高圧用ホースが、前年実績を下回る見込みです。ゴムホース全体の年間生産量(新ゴム量)は、前年比3・1%増の3万3729トン、出荷金額は前年比1・7%増の1410億円といずれもわずかだが前年を上回る見通しです。
 次に、昨年の輸出入の状況ですが、輸出は全体の約38%を占めるアジア向けが前年比約14%減、北米向けは約10%増の見込みで、年間の総輸出額は、前年比約3・6%減の510億円を見込んでいます。輸入につきましては、主力の自動車用ホースを始め、各品種とも前年を上回り、年間の総輸入額は前年比約16%増の238億円の見通しです。
 本年のゴムホースの生産予測量は、前年比3・4%増となる3万4880トン、出荷金額は前年比3・6%増の1460億円と予測しています。
 品種別には、生産構成比約70%を占める自動車用ホースは、半導体不足、部品の供給制約の解消により四輪車生産台数が増えると見込み、年間生産量は前年比4・8%増と予測しています。
 構成比約15%の高圧用ホースは、主な需要先の土木建設機械が生産のピ-ク越え、工作機械は主力の中国・米国向け輸出不振による需要減が継続するものと見込み、年間生産量はほぼ横ばいと予測しています。
 構成比約15%のその他用ホースは、一般汎用ホース(空気、酸素、アセチレン等)、耐油・耐摩耗・ケミカルホースの一般産業分野での需要が安定基調で推移すると見ており、年間生産量は前年比ほぼ横ばいと予測しています。
 24年のゴムホースの生産量は、昨年を上回るレベルで推移するものと予測しています。
 24年の輸出入について申し上げますと、輸出が523億円で微増、輸入が250億円と前年を上回るものと予測しています。同工業会は、国際化の進展に伴い、平成12年にISO機関のホース部門(TC45/SC1)で正式メンバー(Pメンバー)となり、日本の実状や考え方をISOに反映させるよう積極的な働きかけを実施しきました。
 昨年は、タイ・バンコクで開催されたISO/TC45国際会議に技術委員が参画し、プロジェクトリーダーとして積極的な提案を行うことで成果を上げました。本年も奈良で開催予定の国際会議に参画し、Pメンバーとしての更なる活動を推進していきます。

永德文彦会長

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