三洋化成、FLOSFIAと共同開発 マイクロ温度ヒューズ

2023年12月08日

ゴムタイムス社

 三洋化成は12月7日、FLOSFIAと2022年より進めている共同開発により、FLOSFIAの基板埋込技術と、同社が独自開発したヒューズエレメントを組み合わせることで超小型・薄型のパワーモジュールにも基板埋込できるマイクロ温度ヒューズの開発に成功したと発表した。
 基板埋込モジュールには複数のチップを予め埋設して並列動作させ、過熱発生時にはヒューズを断線させて異常箇所以外を保護することで「Fail Operation(フェイルオペレーション)」の機能を実現する。これによりフェイルオペレーションの設計を簡素化することができ、製品開発期間の短縮が期待される。両社は、本技術を電動化時代に求められる製品化サイクルスピードアップに貢献するための新しい技術として幅広い社会実装を目指していく。
 パワーモジュールは電力の変換や制御ができるパワー半導体と各種電子部品を複数組み合わせて一つのパッケージにしたもので、電気自動車、家電製品、産業機器、新エネルギー、通信基地局など各種パワーエレクトロニクス製品の電力制御に使われている。さまざまな分野で電動化や自動化が進む中、パワーエレクトロニクス製品の信頼性の確保はますます重要になっている。
 熱はパワー半導体の故障原因の一つで、高い信頼性を確保するために過熱保護は重要な機能となっている。過熱保護機能として一般的に温度ヒューズが知られているが、自動車など、より高い信頼性が求められる用途では、ヒューズが働いて特定のシステムが切り離されても全体の機能を維持できるよう、バックアップに切り替えるフェイルオペレーション機能も備えられている。しかし、外付けで各種機能を付与すると、システム全体の大型化、重量化につながってしまうだけでなく、接続箇所の不具合発生など他のリスクもあった。また、各分野でパワーエレクトロニクス製品の需要が拡大し、ニーズが多様化する中、必要な要素を一から設計、開発していくと開発期間が長期化してしまい、コストがかかるという課題もあった。
 これらの課題に対し、FLOSFIAは、基板埋込モジュール技術を利用して、超小型・薄型のパワーモジュールに適切な過熱保護機能を埋設した機能性モジュールを開発コンセプトに設定した。
 しかしこれまでの温度ヒューズは、サイズが大きく基板埋込へ形成することが難しい、作動温度が低くリフローはんだ付けに耐えられない、逆に基板の耐熱温度以上で動作するなど設定温度が高すぎる、などの点でいずれも適用が困難であった。
 同社は、化学の視点でニーズを発現するための「機能・性能」を物理的・化学的な「物性」に翻訳し、この「物性」を発揮させることができるよう、化学組成を設計することを得意としている。この手法を活用し、極微小でも 適切な作動温度で通電を遮断できる可溶体を見出した。同ヒューズは、300度以上の高温で作動し、リフロー実装によるはんだ付けにも対応可能。
 両社の技術の融合により実現した、マイクロ温度ヒューズを埋設したパワーモジュールは、パワーエレクトロニクス製品の小型化、薄型化、軽量化、電気抵抗低減、信号伝送の品質改善などに貢献します。また、複数のチップを予め埋設しておくことも可能なため、過熱時に異常部だけを回路から切り離し回路全体を保護するフェイルオペレーションにつながる機能も付与できる。
 ユーザーは同パワーモジュールを組み込むだけで簡単に過熱保護機能を付与でき、省スペースのフェイルオペレーション設計ができるので、アプリケーション開発期間の短縮とコストの削減が期待できる。
 今回開発したマイクロ温度ヒューズを埋設したパワーモジュールで、サイズや信頼性、コストの面で温度ヒューズの適用が難しかった用途などへ、同技術の可能性を探っていく。
 また、FLOSFIAが提案する「パワーモジュールプラットフォーム」では、ユーザーは、標準の仕様に希望の要件を追加するだけでニーズにあったカスタムモジュールを短期間で提案、発注できるシステムの構築を目指しており、同マイクロ温度ヒューズを含め、総合的なソリューション提案によりユーザーのアプリケーション製品開発のさらなるスピードアップに貢献していく。
 パワーモジュールは、今後もさまざまな分野で需要拡大するとみられており、中でも省スペース、高信頼性につながる同パワーモジュールは特に車載用途への適用が期待できる。今後もFLOSFIAのパワーモジュール設計技術、基板埋込などのプロセス技術と同社の組成設計技術を融合することで、パワーモジュールの課題を解決するソリューションを提案していく。
 さらに、両社はFLOSFIAが目指す酸化ガリウム(GaO)を用いた「半導体エコロジー」の実現に向けて引き続き連携を進め、GaOの社会実装の加速化を目指す。

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