ゴム商社特集 緩やかな回復が最多 先行きは不透明感も

2023年11月20日

ゴムタイムス社

 本紙は今年9月時点で各地のゴム製品卸商業組合に加盟する有力ゴム商社を対象に「景気動向と業績予想」に関するアンケート調査を実施した。
 アンケートでは23年9月時点の景気動向や24年9月までのゴム業界の景気見通し、景気判断理由、経営上の問題点についてそれぞれ各社に尋ねた。
 ◆現在の景気動向について
 23年9月時点でのゴム業界の景気動向に関する設問では、「緩やかに回復している」が

42・9%で最も多く、次いで「緩やかに下降している」が28・6%、「変化はあまりないがやや明るい兆しが見える」「変化なし」が14・3%となった。また、「拡大している」「悪化している」と回答した企業はなかった。
 同様の設問を実施した前回調査(23年3月時点、以下同)によると、「緩やかに回復している」が37・5%を占め最多となり、次いで「変化なし」が33・3%、「変化はあまりないがやや明るい兆しが見える」が25%、「緩やかに下降している」が4・2%となっている。
 今回調査と前回調査を比較すると、「緩やかに回復している」の回答は、前回調査と同様、今回調査も最多の結果となった。一方、2番目に多い「緩やかに下降している」は前回の37・5%から若干減少した。「変化はあまりないがやや明るい兆しが見える」との回答は前回の25%から今回は14・3%に下降した。
 ゴム商社を取り巻く経営環境は、主要業界の自動車業界は半導体不足が和らぐなかで、国内の自動車生産は復調傾向にある。この要因から今回のアンケートでも緩やかな回復が最多の回答になったと思われる。
 一方、半導体業界や射出成形機や工作機械は現在、生産が低調に推移する。さらに、エネルギー価格の高止まりや物流費の高騰なども依然継続している。こうした要因が「緩やかに回復している」に次いで「緩やかに下降している」の回答が多かったのではないだろうか。
 ◆景気見通し
 24年9月までのゴム業界の景気見通しについての設問では、「緩やかに回復している」と「緩やかに下降する」が28・6%で最多の回答となった。次いで「拡大基調となる」「緩やかに回復する」「変化はあまりないがやや明るい兆しが見える」「変化なし」が14・3%と同率で続いた。「悪化する」と回答した企業はなかった。
 なお、前回調査(24年3月までの景気見通し)の設問では、「緩やかに回復する」が45・5%と最多の回答となった。「変化はあまりないがやや明るい兆しが見える」が27・3%、「変化なし」が13・6%、「緩やかに下降する」が9・1%、「拡大基調となる」が4・5%、「悪化する」と回答した企業はなかった。
 今回調査と前回調査を比較すると、「緩やかに回復する」との回答は前回の45・5%から今回は28・6%に低下した。「緩やかに下降する」との回答が前回の9・1%から今回は28・6%に上昇している。この回答を踏まえると、ゴム商社の景況感は今後不透明感を増していく可能性がある。
 ◆景気の判断理由
  このほか、景気見通しの判断理由(複数回答可)の設問では、「企業収益の動向」が57・1%で最多を占めた。次いで「アジア・中国の景気動向」が42・9%、「公共投資の波及効果」「設備投資の動向」が28・5%、「住宅着工の動向」「輸出の状況から」「雇用情勢の動向をみて」「為替の動向」が14・3%と続いている。
 ◆経営上の問題点
 そのほかでは、現在の経営上の問題点(複数回答)の設問を用意し、回答してもらった。最も多かった回答は「人材不足、従業員の高齢化」と「経費の増大」「仕入れ価格、原材料価格の値上がり」が71・4%で同率となっている。
 次いで「販売・受注先の開拓」「売上拡大、シェア拡大」が42・9%が同率、「品質向上(商品・サービス・技術)」が9・3%と続いている。

価格・物流問題を商工で議論

全国ゴム商組連合会を開催

 第41回全国ゴム商組連合会(幹事・東部ゴム商組)および全国連合会商工懇談会がセンチュリーコート丸の内(東京都千代田区)で9月13日に開かれた。商工懇談会には、全国5地区の商業組合から理事長ら計21人、賛助会員のメーカーから13社13人、各工業会から5人が参加し、工業用品やベルト、ホースなどの生産状況や賛助会員の市況報告を行った。
 冒頭、今年の幹事である東部ゴム商組の塩谷信雄理事長は「昨年はコロナ禍の中でも中部ゴム商組の皆さまによる万全の準備の下、3年ぶりに連合会を開催し、有意義な時間を過ごさせていただいた。今年はコロナも5類に引き下げになり、コロナ前の生活に戻りつつあるなかで開催できることをうれしく思う」と述べた後、「コロナ禍の3年間、我々は知恵を出し合って事業運営を行ってきた。その環境下で一筋の光が見えたと思った矢先、今度は物価高騰や2024年の物流問題があり、一難去ってまた一難という状況だ。今会合では皆さまと情報を共有しながら、明るい未来につなげる機会としたい」と挨拶を終えた。
 続いて、前回幹事の中部ゴム商組が前年度会計報告を行った後、全国6組合に実施したアンケートの集計結果が書面で紹介された。集計結果によると、今年4月時点での全国の組合員数は484社で昨年4月の489社から5社減少した。増減の内訳は入会が3社(西部3社)で退会が8社(東北1社、東部2社、西部4社、西日本1社)となった。退会理由では「廃業」と「組織統合」が3社となり最多。一方、今年4月の賛助会員数は157社で昨年4月の159社から2社減った。
 組合運営における問題点についての設問では、各地区の組合では組合員、賛助会員の減少を踏まえた「会員の増強」を挙げた。また、「事業や行事に対する参画意識の高揚を図る」ことを課題に挙げた組合もあった。
 製品ごとの景況についての設問では、ベルト(伝動ベルト、搬送ベルト)とホース(ゴム・高圧・樹脂)、工業用品(ゴム板、電子・電気部品、通信情報部品など)の合計10製品ごとに、各組合ごとの景況(今年度上期の売上)が報告された。それによると、ベルトでは伝動・搬送とも前年度上期と比べ「横ばい」と回答したと組合が多かった。ホースではゴムホース、樹脂ホースが「横ばい」と回答した組合が多かったが、高圧ホースは東北が「低調」、中部は「やや低調」と回答した。ただ、東北の下期は「やや低調」、中部の下期も「横ばい」と予想し、下期の回復に期待していることがみてとれる。そのほか、工業用品ではゴム板が「横ばい」が最多の回答となった。
 今後2・3年の業界動向に関する設問では、「穏やかながら良くなる」と回答したのが東部・中部・西部の3組合となった。「現状のまま推移」が東北の1組合、「悪くなることも考えられる」が四国と西日本の2組合となった。
 連合会終了後、各工業会と賛助会員の代表者が出席し、商工懇談会を行った。各工業会の発表会では、日本ゴム工業会の岡本浩一専務理事、日本ベルト工業会の横山直弘常務理事、日本ゴムホース工業会の赤塚六弘常務理事、日本ホース金具工業会の石附髙常務理事が最新の統計を踏まえてそれぞれ概況を説明した。
 続いて商工懇談の場として、商業者側から賛助会員の出席者に対し、今後の価格動向や納期、物流の2024年問題に対する対応、PFAS規制について質問が投げかけられた。今後の価格動向では「原材料価格は高止まりしている。為替が円安基調に触れていることもあり、価格が大幅に下がることはないのではないか」(ベルトメーカー)といった声があった。 2024年問題では「トラック不足、ドライバー不足が懸念されるなか、2030年には現在の3分の1の荷物が運べなくなるという試算もある。その中で荷待ちの時間を減らす、パレット積みに変えることで運送会社に負担をかけない対策を考えている。ただ、運送会社からはさらなる値上げの話がきており、皆さまにも我々メーカー側の状況をご理解していただきたい」(ゴム工業用品メーカー)との回答もあった。PFAS規制では、「PFAS規制は各国で検討がなされている段階で、具体的なリストも示されていない状況にある。最新のPFASの動向を入手しつつ、折をみて自社のホームページで情報発信していくことも考えている」(ホースメーカー)と語った。
 懇談会終了後、懇親会が行われ、東部ゴム商組の山上茂久相談役理事が「コロナが収束しつつあるなか、情報を交換、共有しながら各組合が発展できる懇親会にしてほしい」と挨拶の発声を行い、懇親会がスタート。中締めの挨拶で小島孝彦西部ゴム商組理事長は「関西では阪神タイガースの『アレ』で賑わっている」とユーモアのあるトークで出席者を和ませ、一本締めを行い散会となった。

塩谷理事長の挨拶

商工懇談会の様子

各商業組合が市況報告

全国ゴム商組連合会

 第41回全国ゴム商組連合会がセンチュリーコート丸の内(東京都千代田区)で23年9月13日に開催された。
 今年の幹事組合である東部ゴム商組(塩谷信雄理事長)の進行の下、各組合の活動状況や市況状況の意見交換を行った。報告された各商組の現状を紹介する。
 ◆東北ゴム商組
 前期(令和4年度)のコロナ感染対策に気を配りながら組合運営を実施していたが、今期(令和5年度)は通常の事業運営を行った。8月25日には久しぶりにビアパーティを開催し盛況だった。また、「防潮堤のないまちづくり」を進める宮城県女川町を始め、南三陸町などを視察した。
 ◆東部ゴム商組
 「出来る工夫をして出来る行事を開催していく」というスタンスのもと、会員同士が知恵を出し合い、事業運営を続けている。23年7月に開いた「ゴムの勉強会」では会員とWEB参加のハイブリッド形式で実施し、過去最高の250人が参加した。
 また、23年7月には同組合の工業用品部会による商工懇談会、ベルトホース部会による商工懇談会を開催をそれぞれ4年ぶりに開催した。その中で、7月に実施したベルトホース部会会員企業(29社)の景況感では、売上が4~6月は好転14社、不変9社、悪化6社とまずまずの業績だった。ただ、販売価格の伸びというよりは値上げ効果による売上の増加という声が多く聞かれた。
 ◆中部ゴム商組
 コロナ禍で研修事業や視察事業などは控えていたが、今年度は様子を見ながら組合間の交流を深める事業活動を行っていく。その一環として11月中旬には企業視察として静岡県の工作機械メーカーの工場を見学する予定でいるとし、静岡支部との親交を深める。
 また、遠方の会員が参加しやすいよう、WEBを活用した研修事業など、組合員が参加してメリットのある事業運営を行うとしている。
 ◆西部ゴム商組
 大きなトピックとしては今年5月に大阪ゴム商業会との合併を決議し、大阪ゴム商業会は24年3月をもって事業を終了した。その後は西部ゴム商組として事業運営を行うこととなる。
 事業活動では、ホース部会は昨年11月に第26回ホース流通動態調査を報告するとともにホース商工懇談会を開催した。ベルト部会は今年6月に第26回ベルト流通動態調査を報告するととも商工懇談会を行った。商業者側からはベルト部会の会員など14人、メーカー側から5人が出席し、ベルト流通動態調査の発表ならびにベルトの市況報告など商工双方で活発な意見交換を行った。
 ◆四国ベルト・ホース商業会
 コロナ禍で控えていた事業活動も今年度は活動を再開し、6月5日には香川県で通常総会を開催。また、今年度の通常総会で「四国ベルト・ホース商業会」に名称を改称した。今後も4県持ち回りで通常総会を開催して親睦を深める活動をしていく。

全国ゴム商組連合会

各商組の集合写真

管理者向け研修会を初開催

西部ゴム商組、判断力学ぶ

 西部工業用ゴム製品卸商業組合は9月22日、中央電気倶楽部(大阪市北区)で令和5年度人材育成事業として、初の試みである管理者向け「判断力強化研修」を実施した。当日は組合員、賛助会員から41人が出席した。
 同商組の人材育成事業では、中堅社員向け研修、女性社員向け研修、技術勉強会などを開催しているが、今年度より新しい試みとして管理職が現場に役立つセミナーを開催することになり、㈱インソースの植田啓氏を招いて「判断力強化研修」を実施することとなった。
 冒頭、同商組の矢島友雄人材育成部会部会長は「当組合はこれまでに中堅社員向け研修や女性社員向けを行ってきたが、今回初めて管理者向けの研修会を実施する運びとなった」と紹介し、「短い時間にはなるが、良い刺激を受けて会社の業務に役立ててほしいと思う。今回は参加者をグループに分け、グループワークを行ってもらう。同業業者として、新しい仲間としてお互いコミュニケーションを取ってほしい」とあいさつを終えた。
 続いて講師役の植田氏が登壇し、今回のセミナー内容について説明した。植田氏は「研修会では判断力について説明することになるが、判断モノサシがないと判断できないし、自分が持っている判断のモノサシはそれで十分なのか、といった点を考える機会にしてほしい。判断力のスキルを整理し今後の業務に活かしてほしい」と述べた。
 研修会はA~Gの6グループ(各班6名)に分かれて実施した。グループワークでは「台風上陸の可能性がある遠方への出張判断」をテーマにそれぞれのグループで話し合いを行った後、植田氏が判断における落とし穴や管理職が判断すべきことについて説明した。
 その後は、判断の「観点」や適切な判断を妨げる「心理」、ケーススタディなどのカリキュラムを通じて、参加者は状況に応じて適切な判断ができる力を学んだ。

矢島人材育成部部会長

研修会の様子

全文:約5638文字

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