三洋化成らが企業治験開始 人工タンパク質の有効性確認

2021年07月12日

ゴムタイムス社

 三洋化成工業は7月9日、同社と京都大学大学院医学研究科形成外科学講座森本尚樹教授らが、2021年7月より新規治療材料シルクエラスチンスポンジの有効性の確認を目的とした企業治験を開始すると発表した。同社が中心となり、京都大学、広陵化学工業とともに、同材料の有効性を確認する目的の企業治験を、国内5医療機関にて実施する。

 同社と京都大学は、慢性創傷の治療を目的に、同材料の共同開発を行っている。なお、同プロジェクトは、日本医療研究開発機構(AMED)医工連携イノベーション推進事業等の支援を受けて、事業化に向けた開発を推進している。

 近年、糖尿病患者の増加あるいは高齢化に伴い、糖尿病性皮膚潰瘍等に代表される治りにくい創傷(慢性創傷)の増加が問題となっている。慢性創傷ではさまざまな原因で治癒が遅れることで、細菌に感染し、更に治癒が遅れる悪循環になりやすいことが知られている。開発した新規治療材料は、人工タンパク質シルクエラスチンで作製されたもので、感染しやすい慢性創傷に対して、動物実験等での有効性と、京都大学医学部附属病院で実施した医師主導治験での安全性を確認している。

 対象患者は、既存の保存的な標準治療には奏効しない、あるいは奏効しないと考えられる難治性の皮膚欠損創を有する患者で、症例数は慢性創傷(糖尿病性潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍、褥瘡等)20例、急性創傷(複雑性創傷、深達性Ⅱ度以上の熱傷、コントロール可能で沈静化すると考えられる局所感染創傷)5例となっている。治験期間は2021年7月~11月で、実施施設は京都大学を含む5施設となっている。

 今回の企業治験は、シルクエラスチンスポンジの創傷治癒材としての有効性を確認することを目的としている。同社は、同治験データを基に、2022年度に日本初の遺伝子組み換え技術を用いた医療機器として薬事承認申請を実施する予定としている。また、2023年度には、医療機器として国内上市を目指す。

 

シルクエラスチンスポンジ

シルクエラスチンスポンジ

シルクエラスチンスポンジを用いる企業治験

シルクエラスチンスポンジを用いる企業治験

シルクエラスチンの構造

シルクエラスチンの構造

シルクエラスチン水溶液のゲル化

シルクエラスチン水溶液のゲル化

 

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