現場に役立つゴムの試験機入門講座 第4回 デュロメーターについて

2021年02月22日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

シリーズ連載② 現場に役立つゴムの試験機入門講座
第4回 デュロメーターについて

蓮見―RCT代表 蓮見正武

 加硫ゴムの試験はまず硬さ試験から始まります。
 「硬度」「硬度計」と呼び習わされていますが、JISでは「硬さ」「硬さ計」です。「硬度」という言葉には物質の硬さ軟らかさという意味と、硬水軟水といった水質を表す意味もあるからです。
 ゴムの硬さ試験はJIS K6253に規定され、
 JIS K6253-1:2012 硬さ試験通則
 JIS K6253-2:2012 国際ゴム硬さ(IRHD)
 JIS K6253-3:2012 デュロメーター硬さ
 JIS K6253-4:2012 IRHDポケット硬さ
 JIS K6253-5:2012 硬さ試験機の校正及び検証
 の5部構成となっています。
 硬さ計としてはIRHD(4タイプ)、デュロメーター(4タイプ)、IRHDポケットタイプの9タイプがありますが、最も広く普及しているのはタイプAデュロメーターであることは疑えません。
 タイプAデュロメーターは1915年にAlbert Shoreによって作られ、改良を経て基本的な硬さ計として世界中で広く使われています。
 日本ではタイプAデュロメーターに類似した旧JIS硬度計が長い間使われていましたが1998年に廃止され、タイプAデュロメーターに統合されました。
 タイプAデュロメーターは硬さ20~90に使用することが推奨されていますが、現実にはほとんどすべての硬さ範囲で使われています。
 他の硬さ計についてはJISに譲り、本稿ではタイプAデュロメーターの今昔について解説します。

スプリング式硬さ計の歴史
 ゴムの硬さ計はIRHDに代表される定荷重式とデュロメーターに代表されるスプリング式に分けられます。どちらも針(indenter)を押しつけて針が食い込む深さを読み取ることは同じですが、定荷重式は針入深さに関わらず一定の加重をかけていますが、スプリング式はスプリングのたわみ量が多くなるほど押しつけ力が増加する点が異なります。
 スプリング式硬さ計は戦前から米国のShore社が製造するShoreA型(図1)が使われていました。
 軽量ポータブルで平板状のテストピースだけでなく製品も非破壊で測定できるので広く使われ、国産コピー品もありました。
 扇型(1/4円弧)のA1型と円形のA2型があり、どちらも片持ち板バネの先端に押針(Indenter)がついています。
 戦前、戦中はメンテナンスも不十分であったと思われますが、ShoreA型硬さ計はバラツキが大きいことが問題でした。「計器間の指度の相違が10以上に及ぶことも珍しくない」2)と言われ、1947年に行われた調査では36種類のゴム試料を49台のShoreA型硬度計で測定し、最大39もの差異があったと報告されています3)。
 島津製作所は1947年(昭和22年)に新たな国産硬さ計を開発しました(図2)。この硬さ計の開発経過は日本ゴム協会誌に詳細に報告されています4)。この硬さ計はJIS規格の前身であるJES規格に採用され(JES化学6401)国内に普及しました。
 1949年(昭和24年)にJES規格からJIS規格への切り替えが行われ、1950年(昭和25年)にJIS K6301:1950「ゴム物理試験法」が制定され、この硬さ計はJISに採用されてJIS硬度計と呼ばれるようになりました。
 注)現在JIS K6253で規定されているデュロメーターと区別するために旧JIS硬度計と称します。
 旧JIS硬度計はバネをループ型として押針が垂直に上下するようにしたほかいろいろな改良が施されていますが、基本的にShoreA型と近い硬さ値となるように設計されています。
 押針先端の形状寸法はShoreA型と同じですが突き出し長さは0.04mm長く、バネは若干硬くなっています。そのため旧JIS硬度計はShoreA型よりも針入が深く、1~2ポイント低い硬さ値を示します。5)これが50年後に新JIS移行の妨げになるとは思いもよらぬことでした。
 旧JIS硬度計は加圧面形状の変更などの小変更はあったものの、1947年(昭和22年)から1998年(平成10年)まで50年間にわたって使われ、韓国KS規格にも採用されました。島津製作所以外のメーカー製品も合わせれば数万台が使われたであろうと言われます。
 図3は筆者所有の旧JIS硬度計(古里精機製作所)ですが、指針の戻しバネに渦巻バネが使われています。
 JIS K6301「ゴム物理試験法」は引張試験をはじめ引裂試験、硬さ試験、老化試験などを総合的に規定した規格でしたが1993年(平成5年)ISOと整合を図るために個別規格の新JIS規格が発行され、硬さ試験はJIS K6253:1993となり、IRHD(ノーマル試験、マイクロ試験)、デュロメーター(タイプA、タイプD)、IRHDポケットカタサ試験の5種類の硬さ計が規定されました。
 5年間の移行期間を経てJIS K6301は1998年に廃止されました。このとき、JIS K6301に規定されていたオルセン式硬度計、プセイジョンズ式硬度計も姿を消しました。
 先に述べたように、旧JIS硬度計とタイプAデュロメーターは若干違いがあるので指示する硬さ値はタイプAデュロメーターが1~2高くなります。
 ゴムの硬さ規格(材料規格、製品規格)は旧JIS硬度計に基づいて設定されており、全てをタイプ

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