総論 社会ニーズの変化とゴム薬品の変遷

2021年02月16日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 ゴム用添加剤における製品への活用

総論 社会ニーズの変化とゴム薬品の変遷

ゴム薬品コンサルタント 太智重光

1.はじめに
 自動車産業の隆盛に伴い、タイヤを始めとする各種ゴム製品の生産量は増加の一途をたどり、それに伴い各種ゴム薬品も増産されてきた。しかし、その発展の歴史は単純ではなく、国内外での経済環境の変化および各種法規制の影響を受けて今日に至っている。図11)に、1960年以降の日本国内での天然ゴム(NR)および合成ゴムの消費量の推移を示す。日本のゴム産業界は、石油ショックを始めとする各種経済環境の変化の影響を受けつつも着実に発展してきた。しかし、リーマンショックを発端とする世界経済危機の影響は大きく、新ゴム消費量が大きく落ち込んでいるのがわかる。その後、日本のゴム産業界は東日本大震災に見舞われるが、その影響はさほど大きくないことが、新ゴム消費量の変化から読み取れる。一方、図22)3)に示した有機ゴム薬品の国内生産量の推移を見ると1980年から2001年のデータが欠如しているものの、第二次オイルショック以降は減少傾向が続いたが、2004年頃から上昇基調に転じ、第二次オイルショック以前の状態まで回復した。その後、世界経済危機の影響で生産量が大きく減少し、さらに東日本大震災の影響が加わり、国内生産量は最盛期の約半分にまで落ち込んでいるのがわかる。更に2011年の東日本大震災では多くのユーザがゴム薬品の調達に苦慮した結果、ノンタイヤメーカでも中国品を中心とした海外品の調達に奔走し、このような結果になったと考えられる。
 このようにゴム薬品の多くは、自動車関連産業の経済状況や社会的ニーズの影響を受けて変遷することを余儀なくされていると言える。以下、過去50年間のゴム薬品の移り変わりを、10年間を一区切りとして振り返り、自動車関連産業を中心とした社会ニーズの変化とゴム薬品の動向について、その折々に紹介されたゴム関連の情報にも触れながら紹介する。

2.社会ニーズの変化とゴム薬品の変遷

2.1 1970年-1979年
…高度経済成長と公害対応の時代…
 1839年にグッドイヤーにより硫黄加硫が発見された後、ゴム産業は二つの世界大戦の激動の中、重要軍需産業として位置付けられ、それに伴い多くのゴム薬品が1970年以前に開発・上市された。その結果、1970年頃には、タイヤを主用途としたNRおよびスチレンブタジエンゴム(SBR)用加硫促進剤としてN-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(CBS)とN-オキシジエチレンベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(MBS)が、ブチルゴム用加硫促進剤としてテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)が普及した。また老化防止剤としては、N-フェニル-β-ナフチルアミン(PBAN)と2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMQ)およびオゾン劣化防止剤のN-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)が、素練り促進剤としてペンタクロロチオフェノール(PCTP)が、広く普及し使用されていた。
 このような状況下の1968年、食用油に混入したPCB(ダイオキシン類)による食品公害事件(カネミ油症事件)が起こり、大きな社会問題にまで発展した。このことを重く受け止めた政府は、既存化学薬品の衛生性の見直しと新規化学薬品の上市に際しての衛生性の確認義務を定めた「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」を、世界に先駆けて1973年に制定した。このため化審法は、生分解性と蓄積性に重点を置く傾向にあると言える。また化審法の制定により、新規添加剤の商品化に際して多額の衛生性評価費用がかかるため、既存品の見直しに方向転換する企業も少なくなかった。そのため化審法は、新製品の乱開発を抑制すると共に使用実績のある欧米特許切れ品(別名:ゾロ品、所謂ジェネリック品)の普及に少なからず貢献したと言える。
 カネミ油症事件以降、化学薬品の衛生性にも関心が集り、強い発癌性を有するβ-ナフチルアミンを原料とするPBNAの製造が中止され、代わりにタイヤを主用途とするジエンゴム用老化防止剤としてN,N’-ジアリル-p-フェニレンジアミン(DAPD)が、NBR用老化防止剤としてはオクチル化

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