ゴム配合のトラブルとその原因と対策

2020年09月26日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH1号」に掲載されました。

特集2 ゴム配合・成形技術のトラブル事例とその対策

ゴム配合のトラブルとその原因と対策

ゴム技術コンサルタント 大坪一夫

 多種多様なゴム製品に要求される特長を生かした加工をするために、それに適したゴム配合が作りだされました。またゴムの練り方や成形方法・金型構造もそのゴム配合に適した多種多様な方法が考えだされてきました。
 やってみるとゴム配合作りは、思っていた以上に面白いものがあります。数学や物理学などと違って正解が一つっきりではないところに面白味があります。
 何が正解であるか曖昧な結論で済ますことに平気ではいられないが、加硫ゴム物性の評価結果から十分満足はしていないが、そのゴム配合でも良いだろうと諦めを付けられることができるのも良い。
だから理論的な考察のもとに結果を出すことを望む理論派の技術者にとっては、ゴム配合作りは、はなはだ取っ付き難い仕事でもあります。
 ゴム配合作りは、ともかく相当な努力が必要であり、また運がつきまとうが、旺盛な好奇心からくるゴム配合作りの知識欲が欲しい。それと、まずやってみることが大切です。
 ゴム配合(ゴム材料)が基本的に求められるゴム特性は、加硫ゴムでは、耐熱性、耐酸化劣化性、耐候性、耐油・耐液性などさまざまな耐久性があります。
 未加硫ゴム特性としては、軟らか過ぎず堅過ぎず、平坦加硫性であること、分出しシートが平滑であること、ほどほどの粘着性を持っていることなどです。
 だがゴム配合作りでは、その他に耐オゾン性、耐摩耗性、機械的特性や動的特性なども考慮しなければならず、その結果として耐久性には直接関わらないブルーム性、ブリード性、汚染性など負の特性が生じることになります。これら負の特性は往々にしてゴム配合作りの完成間近に発現することが多いので、ゴム配合を作るには最初が肝心であり、後からゴム配合を変更することは一からやり直しになってしまいます。
 ゴム配合作りで特に注意しなければならない点は、加硫系の組み合わせと軟化剤・可塑剤、老化防止剤などの選択です。

1 オゾンクラック
 オゾンクラックは、ゴムが引っ張られている状態の直角方向のゴム表面に発現します。主に耐オゾン性が弱いジエン系ゴム(二重結合を持つゴム)に起こる現象です。ゴム製品の使用環境がオゾン(空気)に触れるような場所でなければオゾンクラックは出ません。
 ゴム材料を選択あるいは作る段階で、耐オゾン性が必要か否か分かっていて対処できていれば問題はありません。
 オゾンクラックの出方は、ゴム(ポリマー)によっても違うほか、オゾン老化防止剤の使い方によっても違います。だが、ゴム製品の規格上は、「オゾンクラック無きこと」と規定されているので、オゾンクラックの数や大きさは問題にされません。普通、天然ゴムでは微小クラックがたくさん出ますし、SBRでは大きなクラックが数個くらい出ます。
 汎用ゴムで耐オゾン性があるゴムは、EPDM(EPT)、CR、IIRなどがありますが、CRはゴム配合の作り方によっては耐オゾン性が悪くなりますので、オゾン老化防止剤の使用が欠かせません。この時、汚染性の有無に注意をしなければなりません。

注1.‌耐オゾン性が考慮されたゴム材料は、必ず汚染性の有無を調べておかなければなりません。効果があるオゾン老化防止剤の多くは汚染性を有しています。
注2.‌酸化劣化、熱劣化によるクラックは亀甲模様になります。普通に老化防止剤を使用していれば、これらの劣化が発現するには時間が掛かります。
   ‌熱劣化は、耐熱性ゴムのランクを間違えれば直ぐに発現します。
注3.‌オゾン試験条件
   オゾン濃度 50±5pphm
   伸び 20%
   試験温度     40±2℃
   試験時間     72hrs

2 ブルーム、ブルーミング
 ブルーム(bloom)とは、ゴム表面に粉が吹いたように白っぽくなる現象です。もともとは未反応のイオウがゴム表面に出てくる現象のことです。普通ゴムは黒色ですから白っぽいブルームは直ぐに判別できます。ゴム製品の機能上は問題ない場合が多いが、外観不良の対象になることがあります。
 稀に、クリップ、クランプなどで締め付けられるゴム製品で、締め付け不具合が起こることになります。
今までブルームしていなかったゴムが突然ブルームする原因は、ほとんどの場合が加硫不足か、ゴム練り不足が原因です。また、ゴム製品の使用環境が従来と異なった時に起こすこともあります。
 ブルームが発生する時期と原因は、さまざまで加硫後直ぐにブルームするとか、素手でゴムに触れた時に出るとか、梱包箱内で起こるとか、湿度が高い環境で起こるとか、その時期と原因はよくわかりません。
 ブルームするものは、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、ワックス類などですが、一つ言えることは、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、ワックス類の使い過ぎがブルームの原因になることです。
 それぞれの組み合わせによってブルームする時としない時があるので、それを調べるにはゴム配合を創るときに確認する以外に方法はありません。ブルーム促進試験もあるようですが、試験条件や短期間で評価結果がでるのか否かの詳細は分かりません。
ゴム材料の練り上がりの出来栄えによってブルームする時としない時がありますが、もともとブルームする危険性を持っているゴム配合であったのでしょう。
 まさに「すべての不良は練りに通ず」は、至言でしょう。
 ブルームの恒久対策は、加硫系の変更あるいは老化防止剤の変更をすることになりますが、加硫系の変更は加硫ゴム物性が変わってしまうので、直ぐには手を打てないのがブルーム対策の難しいところです。また老化防止剤の変更も耐オゾン性、耐熱性、汚染性などの評価試験に時間が掛かるので、これも直ぐには対応できません。

注1.‌複写機やプリンターなどに使われるゴムロールは、ブルーム不可のゴム材料が選定されるのが前提だからブルーム不良は有り得ないでしょう。
注2.‌では、ブルームした場合の処置はどうするのか。ダメもとで恒温槽による熱処理をするか、蒸気釜(オートクレーブ)で熱処理するかです。その効果と処理時間は試してみるほかありません。しかも再ブルームの可能性を排除できたか否かも不明です。
注3.‌ブルームした配合物が何であるか分析することが大切です。 
‌社内で分析できなければ、分析の依頼先は(財)化学物質評価研究機構などがあります。

3 ブリード
 ブリード(bleed)とは、可塑剤、軟化剤、滑剤、加工助剤などがゴム表面にしみだしてきて、ゴム表面が濡れたような状態になる現象です。ワックス類などはブルームのようにも見えます。
 ブリードしたゴム製品をクリップ、クランプなどで締め付けて装着するとき、滑りが生じて装着が不完全になることがあります。あるいは相手部品に組み込むとき、滑って固定できず脱落してしまうこともあります。
 またブリードするゴムがプラスチック製品と接触するとき、ゴム中の可塑剤がプラスチック製品に移行してしまいプラスチック製品を変質(変形、軟化、溶剤亀裂・ソルベントクラック)させることもあります。特にプラスチック製品のウエルド面あるいは目に見えないウエルド面に割れを生じさせてしまう。
 原料ゴム(ポリマー)との相性(相溶性、SP値)が悪いと可塑剤、軟化剤などはブリードします。ワックス類などは添加量を2部以下に抑えたならば、ほとんど問題を起こしません。これもゴム配合作りの早い段階で分かることで、ブリードしないゴム配合作りをする、としか言いようがありません。
 可塑剤は添加量によってはブリードしないこともあるので、1種類の可塑剤だけを使うのではなく、2,3種類を併用すると良いでしょう。特に-30℃以下の耐寒性を要求されるようなゴム配合(NBR,CR)はブリードの危険性が大きいので耐寒性可塑剤の選択に注意が必要です。
軟化剤の場合は、主にナフテン系を使えばブリードすることはないが、ゴム配合との相性と軟化剤メーカーの違いやグレードの違い、大量に添加することによってはブリードすることもあります。
 また、ブリードしたり、しなかったりするのは練り不良です。ただ練り方のどこの操作が不適切であったのか特定することは難しいが、多分練り時間不足であろう。
 ブリードの原因調査のため、ブリードしたゴム材料のゴム物性検査データと加硫曲線の状態を提示してロール作業者に聞き取り調査をしても原因を特定するのは難しい。
 しかしながらゴム物性の変化と加硫曲線の変化とを詳しく読み取り、主に練り工程のどの部分の変化が影響したのか推測することはできます。このことは何もブリードだけに限らず、練りゴム物性のバラツキを調査する時の基本です。

注1.‌フォギング(fogging);ゴム中の可塑剤・軟化剤・加工助剤などの低分子量物質が気化・蒸発して閉鎖空間内の壁面に蒸着して曇らせる現象。ブリードしやすいゴムはこの傾向が大きい。
注2.‌オイルブリードゴム;一般的には、ブリードするゴムは不具合事項の対象になりますが、このゴム表面の濡れ、滑りやすさを逆手に取って中空ゴムに電線を通しやすくする機能を持たせ、同時に防水機能もたせるゴム部品があります。

4 汚染
 汚染(stain)は、ゴム中の配合剤がゴム表面に出てきて相手方を着色・変色させてしまうことです。
 ゴム製品は組み付けられる相手方(塗装面、プラスチック、木など)によっては、相手方を着色・変色させる可能性があります。特に耐オゾン性、耐熱性を強化したゴム材料、ブルーム性、ブリード性を持つゴム材料は汚染性(staining)に注意を払い、ゴム材料選定の時に相手方が何であるか確認することが大切です。ゴム配合作りの初期の段階で汚染性の有無と汚染性の程度を調べておくことが鉄則です。
 汚染の原因になるものは、主にゴム材料中に添加されている老化防止剤による場合が多いが、一部の軟化剤、加硫促進剤なども汚染の原因となります。ことにナフテン系の軟化剤を大量に添加した場合は汚染性に注意が必要です。アロマチック系の軟化剤は汚染性があるので一般ゴム製品には使用しない方が得策です。しかしナフテン系と比べるとアロマチック系は補強効果があるので目的次第では使えます。
 ゴム配合作りでは、老化防止剤は無くてはならない配合剤であり、効果がある老化防止剤は添加量の多少にかかわらず汚染性を有しています。
 主に耐熱老化防止剤、オゾン老化防止剤などがそれらに相当します。特にアミン系の老化防止剤は、ほとんど汚染性を有しているので使用するのであれば汚染試験は欠かせない項目です。
 しかし老化防止剤の種類によっては、添加する量によって汚染が発現しないものもあります。少量ずつ複数の老化防止剤を併用すると効果が期待できます。これは汚染性に限らず本来の老化防止効果も2,3種類を併用すると効果的です。出来れば全体の添加量は変えずに、複数の老化防止剤の組み合わせを数多く試してみることが基本です。
 もちろん汚染性が気にならないゴム製品もたくさんあるので、それらに使われるゴム材料については自由なゴム配合作りができます。
ただ老化防止剤は、添加量に比例して老化防止効果が上がるものではなく、入れ過ぎはムダになるだけです。
 汚染性が判明してから老化防止剤の種類を変更することは、ゴム配合作りを一からやり直すのと同じことになります。
 稀に、汎用ゴムのEPDMは老化防止剤を使用しなくても耐久性を有するゴムです。しかし汚染性の評価をしなくても良いということではありません。

注1.‌汚染試験の方法は、JIS K6267汚染性の求め方によります。
 ‌あるいはJIS K6403自動車用ゴム材料の分類に規定されている方法を参照します。
 ‌自動車用ゴム製品の場合は、接触汚染と移行汚染とが規定されています。
 ‌1.接触汚染(contact stain)
 ‌加硫ゴムと接触した被汚染材面の加硫ゴム接触跡に発生する汚染。
 ‌2.移行汚染(migration stain)
 ‌加硫ゴムと接触した被汚染材面の加硫ゴム接触跡の周囲及び周辺に発生する汚染。

 試験操作では試験試料を図1の試験操作のように塗装板とSUS板で挟み込み、分銅を乗せて、80℃の恒温槽で所定の時間処理する。
加硫ゴムの汚染の有無を簡単に調べる方法は、加硫ゴムに直接アクリルエナメル(熱硬化性アクリル樹脂)を塗布して、アクリルエナメルの変色を見ます。変色があればゴム配合の見直し、変色がなければ正規の汚染試験を行い、汚染がないゴムであることを確認します。

注) ‌汚染試験後の試験板に紫外線を当てるとさらに発色する場合があるので注意が必要です。
紫外線ランプの仕様例
ランプ入力 6W 波長 2357Å
紫外線出力 1.2W ランプと試験版との距離 4cm
紫外線強度 12.000μW

事例1 養鶏場の風下にあったモータープール
 自動車用の外装ゴム製品には、

 

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