三菱ケミが共同研究開始 熱可塑性エラストマーを医療機器へ適応

2025年10月09日

ゴムタイムス社

 三菱ケミカルは10月8日、九州大学先導物質化学研究所の田中賢教授、大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科の宮川繁教授と連携して、同社の抗血栓性熱可塑性エラストマー「Zelas AMP」の医療機器への適応に関する共同研究を開始したと発表した。
 同共同研究を通じて、Zelas AMPの2027年の上市とグローバル展開を目指す。
 同社は、長年にわたり医療用コンパウンド樹脂「Zelas」の高度な配合・コンパウンド技術を蓄積し、医療用素材の供給体制をグローバルに拡充してきた。このたび同社が独自開発したZelas AMPのキーポリマーは、親水性構造由来の血液適合性と疎水性構造由来の基材親和性を兼ね備えた両親媒性ポリマーとなる。このZelas AMPのキーポリマーを医療機器の基材となる樹脂(塩化ビニル、ウレタン、エンジニアリングプラスチックなど)に添加することで、基材に抗血栓性、低タンパク質吸着性、低細菌付着性などを付与することができる。
 九州大学先導物質化学研究所は、原子・分子・ナノからマクロスケールまで物質構造と機能の解明を得意とし、医療機器の表面設計に強みを持っている。大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科は、心臓移植・補助循環、再生医療など最先端医療の研究開発において世界をリードしている。
 同共同研究では、医療機器の基材となる多様な樹脂に対して、Zelas AMPキーポリマーの最適な添加・配合設計を追求する。医療現場の要望を踏まえたZelas AMPの開発により、抗血栓性による抗凝固剤の使用量低減やコーティング加工レスを実現して、心臓カテーテルや人工心肺回路、透析・輸血部品など、血液と直接接触する医療機器のリスク低減と製造コストの削減を目指す。
 同社は経営ビジョン「KAITEKI Vision35」で「新しい治療に求められる技術や機器」を注力事業領域のひとつに定め、新しい治療を医療グレードの高機能素材で支えることを目指している。医療者と協働した抗血栓性熱可塑性エラストマーZelas AMPの研究開発により、血液接触医療機器の機能性と安全性の向上に貢献していく。

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