旭化成は８月25日、同社発のスピンアウトベンチャーとなるＵＬＴＥＣが設立されたことを発表した。
ＵＬＴＥＣは、窒化アルミニウム（ＡｌＮ）を用いたウルトラワイドギャップ半導体技術を基盤に、深紫外線レーザーダイオード（ＵＶーＣ ＬＤ）、遠紫外線ＬＥＤ、深紫外線センサ、高耐圧パワーデバイスなどの開発・事業化を進めるスタートアップである。このＵＶーＣ ＬＤ技術は、本年６月、レーザー技術分野で世界的に権威のあるベルソルト・ライビンガー・イノベーション賞にて第３位を受賞した。
ＵＬＴＥＣは同社の持つ先進的な技術の新しい出口戦略の一環というミッションを担い、ＰｏＣ（概念実証）と社外パートナーシップを通じ、ＵＶーＣ ＬＤの実用化とマーケットの拡大を目指していく。
同社の研究・開発本部と名古屋大学の天野・本田研究室は２０１７年よりＵＶーＣ ＬＤの共同研究を進めてきた。２０１９年には世界初となる室温パルス発振、２０２２年には同じく世界初となる室温連続発振を実現しており、この技術はケミカル・バイオ計測機器や殺菌用途に向けに国内外で注目されている。しかし、将来の市場形成が期待される一方で、まだ確立した市場が存在しない先進的なテーマでもあった。
このような背景を踏まえ、同社は自社における設備投資と技術開発を通じた従来型の事業化手法ではなく、スピンアウトによる非連結会社のスタートアップとして、ＵＬＴＥＣを設立した。ＵＬＴＥＣに同社が持つ技術をライセンスすることで、意思決定のスピードを高めると同時に、名古屋大学の研究設備や外部リソースを活用し、ファブレスによるアセットライトな事業モデルとして社会実装を進める。なお、ＵＬＴＥＣ設立に際しては、経済産業省が提唱する「出向起業」推進の枠組み「大企業等人材による新規事業促進事業」を利用しており、ＵＬＴＥＣの役員の吉川陽氏、張梓懿氏も同社従業員としてＵＬＴＥＣに出向している。
左から張梓懿氏、天野浩氏（名古屋大学 名誉教授 兼 ＵＬＴＥＣ技術顧問)、久志本真希氏（名古屋大学 准教授 兼 ＵＬＴＥＣ技術顧問）、吉川陽氏
