旭化成、技術協業探索を本格開始 バイオメタン実証実験が成功

2025年08月07日

ゴムタイムス社

 旭化成は8月5日、岡山県倉敷市の児島下水処理場で、2025年2月より実施しているバイオガス精製システムの実証試験において、実ガス環境下での初期評価の結果、メタンの高純度・高回収率の両立に成功したことを発表した。この成果を受け、同社は本技術のグローバル展開に向けたライセンスパートナーの探索を開始する。

 地球温暖化対策やエネルギー安全保障の観点から、再生可能エネルギーの導入が世界的に加速している。中でも、バイオガス由来のバイオメタンは、既存の天然ガスインフラを活用できる持続可能なエネルギー源として注目されている。特に、バイオメタンの導入が進む欧州では、パイプラインへの注入やバイオCNG化の需要が拡大している。また、インドでは急速な都市化に伴う廃棄物処理・エネルギー供給課題への対応として、バイオガスの利活用が国家政策の一環として推進されている。

 同社はこれまで、化学品製造を支える触媒開発やガス分離技術において長年の知見を培ってきた。特に触媒分野では、構造制御や吸着特性に関する独自技術を確立しており、この知見を活かして、CO2を選択的に吸着するゼオライトの開発に成功した。この技術基盤をもとに、同社はPVSAプロセスとゼオライトの組み合わせにより、バイオガスからCO2を効率的に除去して、バイオメタンを高純度かつ高回収率で精製する本システムを開発した。本システムは、再生可能エネルギーであるバイオメタンの利活用拡大に貢献するとともに、カーボンニュートラル社会の実現にも資するソリューションとなる。

 同社は、本システムの性能および運転安定性を実ガス環境下で検証するため、2025年2月より、岡山県倉敷市の児島下水処理場にて、下水汚泥から発生するバイオガスの一部を用いた実証試験を実施している。バイオメタンの精製においては、高い純度と高い回収率の両立が技術的な課題とされており、一般的にこれらはトレードオフの関係にある。本実証では、これら指標の両立性を、実ガス環境下で継続的に検証している。

 本実証の初期評価として、約1か月の連続運転を実施し、その中で精製されたバイオメタンの純度が、天然ガスのパイプライン注入やCNGなどの燃料に十分利用できる水準である97%以上であった。さらに回収率も99・5%以上の高回収率を確認し、バイオメタン精製の課題である高純度かつ高回収率という性能を同時に成立させることに成功した。

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