東洋紡が新設備を竣工 PCR検査試薬の生産増強

2025年05月29日

ゴムタイムス社

 東洋紡は5月27日、福井県敦賀市の敦賀バイオ工場において、遺伝子検査に用いられるPCR検査試薬および酵素や抗体などの遺伝子診断薬原料を製造する新設備を竣工したと発表した。国内における生産・供給体制を強化することで、将来的に起こりうる感染症の拡大防止に貢献する。
 新型コロナウイルスをはじめとする感染症の診断においては、ウイルスの微量なDNAなどを検出可能なPCR検査に代表される遺伝子検査が広く活用されている。世界的に蔓延した新型コロナウイルス感染症が収束した現在も、サル痘や鳥インフルエンザ、デング熱といったさまざまな感染症の発生が世界各地で確認されており、これらの早期発見や予防対策のニーズに対応可能なPCR検査試薬が求められている。
 また、PCR検査試薬は新しい診断方法や治療法の開発を目的とした研究用途でも幅広く利用されており、PCR関連製品の世界市場は2032年まで年率7・2%の規模で拡大が見込まれている。
 こうした状況の下、同社は敦賀バイオ工場にPCR検査試薬および遺伝子診断薬原料の製造設備と品質試験棟を新設した。高濃度DNAの取り扱いに適したクリーンルームや研究試薬を効率的に分析・製造できる環境などを備えた施設を新たに建設。PCR検査試薬および遺伝子診断薬原料を合わせた生産能力をそれまでの約3倍に増強した。
 これにより、将来新たな感染症が世界的規模で拡大した場合の検査試薬の需要に対応できるよう国内での生産体制の強化を図る。また、診断薬の開発や予防医療を目的とした研究用試薬としての展開を図りながら、人びとのQOL向上への貢献に努める。
 同日に開催された竣工式には、福井県や敦賀市をはじめ、協力会社の来賓や同社関係者合わせて約70名が出席。同社代表取締役社長の竹内郁夫氏は、「遺伝子検査用の原料酵素から試薬・診断薬、診断機器までを手掛ける当社は、感染症分野の川上から川下まで一貫したソリューションを提供できるのが強み。これを最大限に活かし、増強した新設備とともに感染症診断から研究開発まで幅広いニーズに対応していく」と決意を述べた。

敦賀バイオ工場の製造設備の外観

敦賀バイオ工場の製造設備の外観

竣工式の様子

竣工式の様子

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