大宝工業が三島研究所を本格始動 DーPIMの性能・用途開発を加速

2025年05月13日

ゴムタイムス社

 大宝工業は5月12日、同社が展開する紙と天然由来成分から射出成形が可能なDーPIMの性能・用途開発を加速させる研究開発拠点として三島研究所(静岡県伊豆の国市)を本格始動することを発表した。

 DーPIM(DAIHO Pulp Injection Molding)は、パルプと植物性結合剤を融合した自然素材から製品を射出成形する、自然の力を利用したサステナビリティ技術。同社では、大手自動車・家電メーカーに向けたプラスチック射出成形を手掛ける一方で、「かけがえのない地球環境を将来の世代に遺す」という理念のもと30年以上も前からサステナブル社会を見据え、このDーPIMの研究開発に着手し、さらに環境負荷の少ない技術とするべく東京大学・日精樹脂工業と共に生産性を上げる開発に取り組んだ。

 DーPIMで作られた製品は、秀でた生分解性、優れた水溶性、燃焼時有害物質発生ゼロ、最高レベルのリサイクル性(紙リサイクル;成形材料再活用)といった特徴を持ち、GHG排出削減、大気・海洋汚染低減といった社会課題の解決に貢献する。

 DーPIMは、アミノ酸配合の生分解性スティック、トイカプセル、ファイルバインダーなど、さまざまな企業・用途での展開が進んでいる。

 近年、DーPIMは化粧品・医薬品・工業用パッケージなど脱プラスチック領域、高い生分解性機能を活かした農業資材(忌避剤・栄養剤)、さらには紙の質感を活かした伝統工芸品などへの導入が検討されるなど、脱プラスチックを超えた機能性へのニーズが急速に高まっている。

 こうしたマクロ環境の変化に伴い、顧客の要求も多様化・高度化する中で、素材レベルからのカスタマイズ、業界ごとの最適設計など、より深い対応が求められるようになった。

 この流れを受けて、さらに技術開発と用途展開を強化すべく、同社の株主であるアドバンテッジパートナーズの支援のもと、大型投資を実施。紙産業の中核地である静岡県に新たな研究拠点を2024年5月に開設した。

 約1年にわたる準備期間を経て、開発用射出成形機や試験機の導入、DーPIMに共感する社内メンバーや製紙業界から紙・パルプ繊維の可能性を長年研究してきた専門家を招集し、三島研究所はこのたび本格始動する。

 DーPIMは、射出成形による高い寸法精度と優れた生分解性を実現する一方で、日常環境下では分解しにくい安定性を併せ持つ。さらに、配合の工夫により難燃性・耐水性・耐油性・ガス透過性など、紙素材の枠を超えた機能性を備えることができ、特にフッ素樹脂を使用せずとも高い耐油性を示すことからPFAS削減に寄与できる可能性が示唆されている。

「DーPIM」ロゴマーク

「DーPIM」ロゴマーク

DーPIMを使用したアミノ酸配合の生分解性スティック

DーPIMを使用したアミノ酸配合の生分解性スティック

DーPIMを使用したトイカプセル

DーPIMを使用したトイカプセル

DーPIMを使用したファイルバインダー

DーPIMを使用したファイルバインダー

 

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