東レ、ポリアミド4微粒子開発 マイクロプラビーズ問題解消へ

2024年04月11日

ゴムタイムス社

 東レは4月10日、海洋生分解性をもつ真球状のポリアミド4微粒子を新たに開発したと発表した。同微粒子は、マイクロプラスチックビーズの使用が禁止される化粧品の原料として、サンプル提供と評価を行い、量産販売に向けた技術開発を進める。発売は2024年度末を目標としている。
 同社はこれまで、ファンデーションやアイシャドウなどに、柔らかな肌触りといった官能性や滑り性を付与するために使用される、真球状のポリアミド12微粒子を製造・販売してきた。しかし、化粧品や洗顔料などに含まれるマイクロプラスチックビーズは、生活排水の処理・ろ過システムを通過し、海洋に流れ着くため、生物多様性や海洋汚染防止の観点から、大きな環境課題となっており、世界各国で規制が始まっている。欧州では2023年9月に欧州化学物質庁(ECHA)によって、マイクロプラスチックビーズの使用を制限する項目がREACH規則に追記された。今後、意図的に添加された5mm以下の合成ポリマー微粒子の使用は段階的に制限され、2035年には全面的に使用禁止となる。
 同社は、上記の環境問題および規制に対応するため、生分解性を有するポリアミド4の研究・技術開発を進めてきた。
 真球形状のポリマー微粒子の一般的な製造方法は大別して2種類あり、1つ目はポリマーを溶媒に溶かし、ミセル(球状物)が形成された後、溶媒を除去することで微粒子状に加工する方法、2つ目はポリマーを熱によって溶融して微粒子状に加工する方法。しかし、ポリアミド4を溶解できる溶媒は少なく、また、融点が高く溶融と同時に熱分解が起こる特異な熱特性を有するため、既存技術では真球形状を有する微粒子化が困難とされてきた。そこで同社は、長年の研究・技術開発で培った独自のポリアミドの微粒子化技術を活用することで、これらの課題を解決し、ポリアミド4の微粒子化、また真球化に成功した。
 なお、同微粒子の生分解性については、活性汚泥中での生分解性だけでなく、土壌と比較して微生物が少ない海洋中でも十分な生分解性を有することを確認している。
 同微粒子は、化粧品原料として販売に必要な安全性確認や化粧品成分表示名称の取得を完了しており、化粧品メーカーの顧客と協力し少量試作したサンプルの評価を進めている。今後、顧客からのフィードバックを踏まえ、さらなる品質向上と量産体制の構築を進める。
 また、将来的にはバイオマス原料を使用した生分解性ポリマー微粒子の販売を目指し、今後も研究・技術開発に取り組んでいく。
 同社は、「東レグループサステナビリティ・ビジョン」において、「資源が持続可能な形で管理される世界」を、2050年に目指す世界のひとつとしている。今後も、顧客の環境配慮型樹脂のニーズに応えていくことで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいく。

生分解可能真球状ポリアミド4微粒子

生分解可能真球状ポリアミド4微粒子

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