東洋紡エムシー、回収率65%超 海水淡水化実証実験が終了

2024年02月16日

ゴムタイムス社

 東洋紡エムシーは2月15日、同社が製造販売する中空糸型正浸透膜(Forward Osmosis=FO膜)を採用したトレビ社の海水淡水化実証実験(米・ハワイ州)が終了し、海水から1日当たり500m3の真水を造り出すことに成功し、海水からの真水回収率は65%を超えたことを発表した。
 今回の実証実験が行われたプラントは、集光型太陽熱発電(CSP)技術を利用して太陽光の持つエネルギーを熱へと変換し、同プラントの稼働に必要なエネルギーの大半を生み出す「省エネルギー型の海水淡水化システム」になる。実証実験は2022年6月から2023年9月にかけて行われ、得られた真水は農業用水に活用された。
 同社は、1970年代に繊維事業で培った紡糸技術を応用し、水分子を通す一方で一定の大きさ以上の分子やイオンを通さない中空糸型RO膜を開発。1980年代より、中東地域などの海水淡水化プラントに供給してきた。
 一方、トレビ社は、FO膜を用いた海水淡水化システムの研究開発・製造を行う米国企業であるが、米エネルギー省の資金援助を受けてハワイ州立自然エネルギー研究所(NELHA)の敷地内に海水淡水化プラントを建設し、その装置部に同社製のFO膜を採用。海水淡水化において浸透圧差を駆動力として利用するFO膜法は、従来の蒸発法やRO膜法に比べて、少ない電力で海水から真水を取り出すことができる。
 トレビ社は2020年、業界に先駆けて商用利用可能なFO膜を利用した水処理システムを開発し、同プラントにも採用された。同社は2012年よりトレビ社との協業を開始し、圧力損失が少なく高効率なFO膜の開発・性能向上などを通じて、海水淡水化システムの実用化に取り組んできた。同社はトレビ社への出資を通して、FO膜法による海水淡水化プラントの普及に向けた協業関係を強化している。
 今後、トレビ社は1日あたり6,000m3規模の海水淡水化プラントを同じ敷地内に建設する予定。同社は、省エネルギー型の海水淡水化を実現するFO膜の供給を通じて、世界の水不足をはじめとする環境課題の解決に貢献していく。

中空糸型正浸透膜

中空糸型正浸透膜

実証実験設備

実証実験設備

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