クラレ 年頭挨拶 代表取締役川原仁社長

2024年01月10日

ゴムタイムス社

 まずは、元日に発生した能登半島地震では、甚大な被害が出ています。現在も余震が続き、救出活動が行われていますが、一人でも多くの命が救われることをお祈りします。
 お亡くなりになった方々にお悔やみを申し上げますとともに、怪我をされた方、避難生活を余儀なくされている方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。

 昨年は、2020年から続いていた新型コロナウイルス感染症による経済活動・日常生活の制限がほぼ無くなり、face to faceでの会合、国境を跨いでの移動が本格的に再開した一年となりました。一方で、我々の生活は、コロナ前の状況にそのまま戻るのではなく、コロナ禍中に大きく進展したデジタル化を踏まえた、いわゆる「ニューノーマル」での生活・働き方を模索した一年でもあったと思います。
 地球環境においては、2023年は世界的な猛暑により、世界の平均気温は、観測史上、最も暖かい一年となることがほぼ確実になったと言われており、地球規模での温暖化対策が、差し迫った課題であることを再認識させられました。
 世界に目を向けると、ロシア・ウクライナ情勢は収束の気配をみせず、米中対立は依然継続しています。さらに、10月には中東地域で新たな紛争が起こり、地政学上の不安定さが増した一年でした。

 経済においては、先進国における金利上昇、インフレが継続し、中国経済の回復が想定を大きく下回りました。円安による追い風はあったものの、当社グループを取り巻く状況は概して厳しく、この状況は、2024年も続くことが予想されます。

 「3つの挑戦」は意識改革に伴う活動。自分事として捉え、積極的に関与する
 
 総じて厳しい事業環境下ではありますが、本年度は当社創立100周年に向けた中期経営計画「PASSION 2026」の折り返し地点、5ヵ年計画の3年目にあたる年となります。全社的に計画の進捗を確認し、これまでの2年間の結果や状況変化に応じて、改めるべき戦略や施策があれば早急に改め、残り3年間のアクションを加速しなければなりません。中でも、「事業ポートフォリオの高度化」など幾つかの重要テーマについては、計画策定時の内容に加えてポスト「PASSION 2026」も視野に入れた、さらに深い議論を進めます。
 また、「PASSION 2026」で掲げた「3つの挑戦」については、サステナビリティ推進本部、DXIT本部、イノベーションネットワーキングセンターなどの横串機能を中心に、各事業、グループ各社を巻き込んだ活動が進んでいることを、皆さんもKuraray Xchange等を通じてご存じだと思います。
 2023年度においては、技術プラットフォームの立ち上げ、DX人材育成プログラムのスタート、PSA製品評価の拡大といった進展をみています。これら全社課題への対応は、関係部署の尽力と皆さんの協力により着実に進展していますが、このような意識変革を伴う活動では、油断して気を抜けば、変革したはずの意識がすぐにまた元の状態に戻ることが往々にしてあります。引き続き変革の手を緩めることなく、短期間で出来ることは速やかに実行し、中長期的な課題は粘り強く取り組んでいくべく、すべての拠点、あらゆる組織において、皆さんが「3つの挑戦」を自分事と捉えてこれらの活動に関心を持ち、積極的に関与するようにお願いします。

従来のやり方や発想に縛られることなく、積極果敢に挑戦を

 各事業、グループ会社においては、当初の計画通り或いは想定を上回って施策が進捗している事業もあれば、環境変化により目標の見直しが必要となっている事業もあり、状況は様々ですが、「PASSION 2026」で立てた2026年度目標の達成のためには、より資本効率を高め、資源を集中すべき分野に集中し、かつ成長のスピードを上げる方策も必要です。
 先ほど述べたような生活様式の変化や環境問題への更なる意識の高まりは、当社グループにとって新たなビジネス機会も多く生み出しているはずです。機会を取りこぼすことなく、そして、従来のやり方や発想に縛られることなく積極果敢に挑戦し、スピーディーな行動で、より一層の事業発展につなげていきましょう。
 
 これらの活動を通じて、当社が、2026年の創立100周年およびその先の未来に向けて、使命である「独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与する」ことを継続する力と、成長する力を併せ持ったサステナブルな企業体であることを、社内外のステークホルダーに示せるようにしたいと考えています。

 自分自身とクラレグループが共に成長し進化するような好循環を

さて、当社は昨年12月に、2018年に発生したクラレアメリカ社のエバール工場火災事故の検証結果を社内外に公表しました。本年度の取り組みとして、事故に至った本質的な原因の理解と再発防止施策をグループ内で共有し、このような重大事案が再び起こらないようにするための活動をグローバルに推進します。世界中の生産拠点、研究開発拠点、事業所のすべてにおいて『安全は全ての礎』です。
 我々一人ひとりが安全に対する感性を研ぎ澄まし、深く考え、安全で事故が起こらない会社を目指して仕事に取り組むことで、「安全で、安心して働ける会社」を築きたいと考えます。
 皆さんのご協力と真摯な取り組みをお願いします。

 最後になりますが、私は、クラレグループの一人ひとりが社会人・企業人としての高い倫理観と、コンプライアンスの徹底に対する強い責任意識を持ち、ヒトとその集合体である会社が良き企業市民としての存在感を示し社会的価値を生む中で、自分自身も成長しつつ会社も進化するような好循環を想い描いています。そして、皆が失敗を恐れずに挑戦する前向きな姿勢と行動力を持つことで、クラレグループが活力と創造力のある元気な企業体であり続け、様々な場面でイノベーションや変革に繋がるアイデアが生み出され、それを実現して、大きな成功に繋がることを期待します。

 それでは、世界中のクラレグループの皆さんとご家族の方々にとって、本年が健康で幸多い年となりますようお祈りしまして、私の挨拶といたします。

代表取締役川原仁社長

代表取締役川原仁社長

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