GSIクレオスらが共同研究 革新的多機能材料創製に向けて

2023年09月27日

ゴムタイムス社

 GSIクレオスは9月26日、海洋研究開発機構、高度情報科学技術研究機構と共に、地球環境負荷の軽減に向けたグローバルなアプローチとして、あらゆる産業セグメントに関わる「エネルギー効率の向上」や「省エネルギー」を実現する「グリーン・トライボロジー」の共同研究開発事業を開始すると発表した。
 この革新的共同研究開発の提案は、防衛装備庁の「令和5年度安全保障技術研究推進制度」大規模研究課題タイプSにおいて、課題名「実験・計算科学の融合による革新的塗膜創成と機序解明の基礎研究」として採択され、5年間に及ぶ支援を受けて実施する。
 3機関による共同研究開発事業では、ミクロ・マクロ領域における実験科学とAIやスーパーコンピュータを駆使した計算科学を融合し、ナノ炭素の微量添加により初めて発現する多機能材料を創製する。例えば深海のような超高圧雰囲気や宇宙空間のような真空雰囲気など、超過酷環境での適用可能性を追求すると共に、電子顕微鏡の新規評価法を開発し、その活用により多機能性発現の起源解明を目指すことを目的としており、分野横断型研究としては世界最先端の研究開発事業となる。
 同社は、炭素系複合材料の研究開発&加工製造として、20年以上にわたるナノ炭素(CNT)の基礎研究世界トップクラスの応用開発実績を持つ。同研究開発事業の統括、高耐久性を有する新規多機能塗膜の創製、SEMによる広域観察と新規解析法の確立の役割を担う。
 海洋研究開発機構は、深海から表層に至る海洋研究開発のための国立海洋研究開発拠点となる。新規多機能塗膜の各種評価、常圧から高圧に至る水中環境での評価試験、部品形状での試験法の確立と実施を担う。
 高度情報科学技術研究機構は、炭素材料&炭素系複合材料に関する豊富な実績を持つ。分子シミュレーションによる構造解析と物性評価、高分子複合構造の摩擦係数計算、計測インフォマティックス構築を担う。
 ナノ構造の解明と計算科学の連携による横断的な理解により、ナノ空間とは異なるマクロ空間にある塗膜やバルク体のマクロ物性における現象と関連付けることは、海洋や宇宙などの様々な極限条件だけでなく、地上における使用環境においても革新的高耐久、多機能材料を実現するための大いなる知見となる。
 また同研究で開発する実験・計算・データ科学の融合による計測インフォマティックスシステムは、ナノ材料や微量添加材料の解析全般に適用可能な有用な汎用的手法となる。
 この研究開発の最終目標は、あらゆる駆動装置の省エネルギーの実現により、環境負荷の低減に貢献することであり、その波及効果は「トライボロジー」の先行研究による試算を基にすると、日本の2022年度実質GDP換算7・6兆円に相当する極めて大きい社会的インパクトとなる。

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