東レらが共同で NEDOと契約締結

2023年08月07日

ゴムタイムス社

 双日、電力中央研究所、Green Earth Institute(GEI)、DIC、東レ、ダイセルは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に、「水素細菌によるCO2とH2を原料とする革新的なものづくり技術の開発」のテーマを共同で提案し、実施予定先として採択され、このたびNEDOと契約を締結したと発表した。
 同事業は、CO2とH2から様々な化成品や飼料原料を生産するための技術開発に取り組むものとなる。
 CO2を直接原料として物質生産するバイオプロセスは、世界で商用化事例のない新たなものづくり技術であり、カーボンニュートラル社会の実現に向けた選択肢の一つとして期待されている。
 開発対象とする水素細菌は、CO2の固定化速度が最も速い微生物の一種とされている。その高いCO2固定化能を活かしつつ遺伝子組換えを施すことで、有用な化成品を高効率で生産する菌株を創製する。生産する化成品は、プラスチック、インクや塗料、繊維、化粧品など、身の回りの様々な用途に使われる原料となる。
 さらに、化成品の生産プロセスにより副生する菌体の残渣は、近年需要が高まりつつある、飼料の代替タンパク源等へ利用することで、事業の脱炭素価値を一層高めるとともに、食料問題の解決にも寄与する。
 菌体の開発と並行して、段階的なスケールアップによる実証試験を行い、安全性と効率性の高いガス培養手法を確立するとともに、CO2の削減効果を適切に計測し、製品に環境価値を付与する。
 これまで6事業者が培ってきた知見や技術、機能を集結することで、次世代バイオものづくり技術の社会実装を実現させ、脱炭素化ニーズの高まりを捉えた化成品・素材産業の構造転換を推進する。
 事業の委託契約期間は、2023年度~2025年度、総事業期間(予定)は、2023年度~2030年度、総事業費は約68億円となる。
 各機関の役割、実施内容として、双日は、世界の様々な国と地域に事業を展開する総合商社として、幅広いビジネスの知見を活かし、低炭素社会・循環型社会に即した素材ビジネスを強化している。
 同事業では、幹事会社としての事業統括に加え、各種製品のマーケティング、実証試験を担う。また、社会実装に必要不可欠となる、原料である水素のインフラ整備や、製品の誘導品開発・高付加価値化を通じてサプライチェーンの構築、事業化を実現する。
 電力中央研究所は、「持続可能で社会に受容されるエネルギーシステム」の実現を2050年に目指す姿と定め、その実現に必要となるテーマの一つとして「資源循環・カーボンリサイクルの確立」を掲げ、CO2の資源化に必要な技術の確立に取り組んでいる。
 同事業では、これまでにないCO2の資源化の実現を目指し、水素細菌の利用に際して基盤となる培養技術の開発に取り組み、安全で効率的なガス利用を可能とするパイロット規模までの培養プロセスの実証を目指す。また、併せてプロセスでの物質生産について Life Cycle-CO2評価を行い、既存の石化品生産プロセスを代替した場合のCO2 削減効果を見積もる。
 GEIは、「グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む」というミッションの実現に向けて、バイオリファイナリーの専業企業として、バイオものづくりのプラットフォーマー企業を目指している。
 同事業では、水素細菌を使ったバイオプラスチックの原料となるバイオ化学品の生産菌体の開発、水素細菌の培養設備の実証規模へのスケールアップ、実証試験のオペレーションを担当する。
 DICは、グローバルな化学メーカーとしてサステナビリティを重要な経営戦略と位置づけ、「社会の持続的繁栄に貢献する事業ポートフォリオの構築」と「地球環境と社会のサステナビリティ実現に貢献」することを目指している。
 同事業では、DICが強みとする多彩な基盤技術とバイオ材料設計の技術を生かし、GEI社が開発した菌体を利用したバイオ化学品の生産プロセス開発、および実証試験の実施を担う。水素細菌から得られたサステナブルなバイオ化学品の事業化を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。
 東レでは、サステナビリティ(持続可能性)を21世紀の世界における最重要の共通課題だと考えている。「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念の下、パリ協定やSDGSをはじめとする世界的目標の追求のために、全力を尽くしていく。
 同事業では、東レのバイオ技術を活かし、CO2から直接モノマーを生産可能な水素細菌を開発するとともに、生産プロセス実証を行うことで、CO2から東レ製品へのサプライチェーン構築を目指す。
 ダイセルは創業以来、モノづくりを通じて世の中に貢献する価値を生み出してきた。人々に幸せを提供する価値ある製品を、ヒトや地球にやさしい方法で生産する技術を開発・発展させることで、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。
 同事業では、CO2から化粧品原料を生産するための技術開発及び生産実証を行う。従来の石油由来・ケミカルプロセスからCO2由来・バイオプロセスへ置き換え、さらに精製度の高い製品を提供することで、カーボンニュートラルな社会に貢献する。
 双日の本社所在地は、東京都千代田区内幸町二丁目1番1号、代表者は藤本昌義氏、電力中央研究所の本社所在地は、東京都千代田区大手町一丁目6―1、代表者は平岩芳朗氏、GreenEarthInstituteの本社所在地は、東京都新宿区新宿三丁目5-6、代表者は伊原智人氏、DICの本社所在地は、東京都中央区日本橋三丁目7-20、代表者は猪野薫氏、東レの本社所在地は、東京都中央区日本橋室町二丁目1-1、代表者は大矢光雄氏、ダイセルの本社所在地は、大阪府大阪市北区大深町3―1、代表者は小河義美氏となる。

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