クラレトレーディング SPS繊維エプシロンを開発

2023年06月08日

ゴムタイムス社

 クラレトレーディング6月7日は、出光興産が独自開発したスチレン系樹脂・ザレック(シンジオタクチックポリスチレン(SPS))を用いて、優れた速乾性とドライ感を有する繊維「エプシロン」を新たに開発したことを発表した。「エプシロン」は、高い疎水性や耐熱性などのユニークな特長を併せ持つため、ポリプロピレン繊維では困難であったアイロンを用いたケア(シワ取り)やプリント(捺染)によるデザイン性の向上を実現する。
 2023年下期の販売開始に向けて、衣料・スポーツ・インテリア分野等への提案を加速する。
 従来、速乾性を有する繊維としてはポリエステルが主流であり、より高い機能が求められる用途では撥水加工を施すことが一般的であった。しかし、撥水加工には洗濯による機能低下や、加工剤による環境への悪影響といった課題があった。
 同社は、出光興産が世界で初めて合成に成功したSPSと、同社グループが持つ溶融紡糸製造技術を組み合わせることにより、撥水加工を施すことなく、衣料やスポーツ用品などに求められる優れた速乾性やドライ感による着用時の快適性向上に貢献するユニークな繊維を開発した。
 SPSの分子構造は、立体規則性を持ち、結晶性が高いため優れた疎水性を有する。この特長から、「エプシロン」を使用した生地は、水分の乾燥スピードが速くなる。速乾性能はポリエステル対比で約1・8倍となる。
 SPSの分子構造は、結晶性が高く、耐熱性(融点270℃)に優れるため、分散染料を使用した高圧染色にも対応し、ポリエステルとの交編、交織も可能となる。さらには、プリント(捺染)だけではなく、プリント染色(昇華)やアイロンを用いたケアなど、取り扱いの幅が広がる。
 SPS繊維の比重は1・04で、ポリエステルの1・38と比較して軽く、56dtexのSPS繊維ではポリエステルの74dtex相当の太さ(嵩高)となり、その用途はスポーツウェア、インナーウェア(下着、靴下、水着など)、インテリア製品(カーペット、寝具、カバー類など)、資材用品などが想定されている。

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