積水化学が地球環境産業技術研究機構と NEDO事業として採択

2023年04月17日

ゴムタイムス社

 積水化学工業は4月13日、同社と地球環境産業技術研究機構(RITE)で、国立研究開発法人新エネルギー‧産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金(GI 基金)事業「バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」に共同で応募し、「バイオものづくり技術によるCO2を原料とした高付加価値化学品の製品化」が実施予定先として採択されたと発表した。
 CO2由来の高機能接着剤を微生物により生産する技術の確立を目指す。
 バイオものづくり技術を利用したカーボンリサイクルは、バイオマス資源や温室効果ガスであるCO2を原料として化学品などを生産する取り組みであり、カーボンニュートラル社会の実現に向けた有力な選択肢の一つと言われている。
 同社は、CO2をCOへ90%という高い転化率で変換する技術を開発し、世界鉄鋼大手のアルセロール・ミタル社と共同で、製鉄時に排出するガスからCO2を分離・回収し COに変換して製鉄プロセスへ活用を図るプロジェクトを進めるなど、CO2 回収と利用に関わる技術(CCU)開発に取り組んできた。
 また、微生物を活用して可燃性ごみをエタノールに変換するバイオリファイナリー技術を確立し、事業化に向けて実証を進めている。
 RITEは、地球温暖化対策における中心課題であるCO2の削減のため、再生可能資源であるバイオマスを原料として、バイオ燃料や芳香族化合物及びアミノ酸を中心としたグリーン化学品を生産するバイオリファイナリー技術の研究開発を続けてきている。
 特に、毒性の強い芳香族化合物の微生物生産では、独自に開発した RITE Bioprocessにより、多くの芳香族化合物の生産が可能となっている。
 現在、それら化学品の生産技術開発に加え、社会実装にも積極的に取り組んでいる。今回、両社は、バイオものづくり技術を核として、廃棄物処理施設から排出する燃焼排ガス(CO2)を原料として高付加価値化学品を製造する革新的なものづくり手法を構築し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献したいとの考えで一致し、GI基金に共同で応募し採択された。
 研究開発内容は、茨城県ひたちなか・東海クリーンセンターの最終排ガスからCO2を濃縮し、ケミカルルーピング反応技術を活用してCOを製造する。そのCOから芳香族化合物を生産可能な微生物をCO資化菌の育種により開発し、培養制御し(バイオ生産技術)、芳香族化合物を高効率に生産する技術(バイオプロセス開発)などと融合し、統合生産プロセスを確立する。
 そしてスケールアップ検討を行い、廃棄物処理施設から排出する燃焼排ガスから高機能接着剤の連続製造を可能とするプラントを建設し、実用化を目指す。
 本プロジェクトでは、同社は、これまでに培ってきた触媒技術とバイオ生産技術を活かし、CO2→COの変換反応とCO→高付加価値化学品のバイオプロセス設計とスケールアップ実証を担当する。RITEは、これまでに培ってきたスマートセル技術とバイオ生産技術を活かし、COから高付加価値化学品原料を生産する微生物開発とバイオプロセス開発を担当する。
 今後の展開としては、現時点でもバイオ化ニーズが顕在化している高機能接着剤をターゲットに定め、2030年に年間33トンのCO2を利用した事業開始を目指す。また、この技術を用いた芳香族化合物(モノマー)の販売や、さらには多様なポリマーの作製技術につなげ、世界のバイオ化を牽引することを目指す。
 同社はバイオものづくり技術を核として廃棄物燃焼ガス(CO2)を原料とする高付加価値化学品の製造プロセスを確立し、2050年カーボンニュートラル社会の実現に貢献し、将来の世代も安心して暮らせる持続可能な社会を実現したいとしている。
 同社グループは、長期ビジョン「Vision 2030」において、「Innovation for the Earth」をビジョンステートメントとして掲げ、イノベーションにより「サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、未来につづく安心を創造していく」ことを宣言し、脱炭素に資する新技術・新事業に取り組んでいる。
 これからも同社グループは、持続可能な社会の実現と同社グループの成長の両立を目指して社会課題解決に貢献し、ステークホルダーの方々に信頼される企業であり続けるための取り組みを進めていく。RITEは、1990年に我が国が提唱した「地球再生計画」に基づき、地球温暖化問題に対する革新的な環境技術の開発などを国際的に推進する中核的研究機関として設立し、今回の事業に係るバイオリファイナリー技術の開発ばかりでなく、CCUS技術や、温暖化対策のシナリオ策定など、地球温暖化問題に特化した独自性の高い研究を行っている。
 これまでの知見を踏まえて、引き続き地球温暖化防止に資する研究開発を強力に推進し、2050 年カーボンニュートラル達成に向けて貢献していく。

研究開発内容

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