DICが開発 LIBの負極用水系バインダー

2023年04月13日

ゴムタイムス社

 DICは4月11日、リチウムイオン電池(LIB)の負極用水系バインダー「WATERSOL(ウォーターゾール)―LB」を開発したと発表した。同製品は、環境負荷が低い水系の製品であり、優れた膨張抑制効果や低い内部抵抗率などの特長を持ち、LIBの長寿命化に貢献する。同社は現在サンプルワークを開始しており、今後、日本、中国、米国、欧州地域での販売を視野にグローバルでの供給体制を確立し、2025年には売上高10億円を目指す。

 LIBは、1990年代に日本で商品化されて以来、電気自動車(EV)やスマートフォン・携帯電話、ノートパソコン、電動工具、産業機械、航空機、照明器具、コードレス小型家電など、さまざまな分野で使用されている。LIB製品の高機能化に伴い、耐久性(長寿命)、航続距離(長時間駆動)、急速充電(短時間充電)などの性能向上に寄与する素材開発が求められている。

 負極バインダーは、リチウムイオンが出入りする負極材料や活物質、その他補助添加剤や集電体を結着させる接着剤の役割を果たし、電極の機械強度と電池性能に影響を及ぼすLIBの重要な構成材料となっている。

 同社が開発した「WATERSOL―LB」は、LIBの負極向けアクリル系合成樹脂バインダーであり、溶剤系に比べ製造時の環境負荷が低い水系の製品となっている。現在、広く使われている負極用バインダーは、高温や低温環境では劣化しやすく、高容量化のためのシリコン系活物質の膨張収縮に対応しにくいなどの課題がある。同社の開発品は、従来品と比較し、高温(45℃)および低温下(-10℃)での充放電時の容量維持において、数倍の改善が見られるなど、環境変化への適応性に優れている。また、LIBの内部抵抗の低減を可能にし、低容量から高容量の幅広い容量帯の負極材に適応する。これらの要求性能を満たすことで、LIBの長寿命化に貢献する。

 今後も同社グループは、社会変革に対応した省エネルギーや環境への負荷低減に寄与するサステナブル製品を開発・提供することで、社会の持続的繁栄に貢献していくとしている。

 

LIB電池内部構造

LIB電池内部構造

 

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