年頭所感 出光興産 木藤俊一社長

2023年01月10日

ゴムタイムス社

 新年おめでとうございます。皆さんには、健やかに新年を迎えられたことと、お慶び申し上げます。

 昨年を振り返りますと、ロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギーをめぐる情勢は大きく変化しました。G7によるロシア産原油に対する禁輸措置やプライスキャップ制度の導入、日本では燃料油価格激変緩和対策事業の開始など、化石エネルギーの重要性やエネルギー安全保障の課題を再認識する年となりました。
 未来の地球環境を守るために、カーボンニュートラルは避けて通れません。しかし、私たちは今日の暮らしを支えるために必要なエネルギーをお届けするという責任も負っています。エネルギー安定供給と、脱炭素に向かうエネルギートランジションを、時間軸を見誤ることなく両立させていくことが、これからの時代に私たちが担うべき役割であると考えています。

 昨年11月に次期中期経営計画(対象年度2023~2025年度)を公表しましたが、投資家をはじめとする多くのステークホルダーから好意的な評価を頂きました。この評価には、当社が示した2050年カーボンニュートラル実現と、その転換期である2030年におけるトランジションの具現化に対する一定の理解が得られたという側面もありますが、それ以上に、現在燃料油や石炭事業においてエネルギーの安定供給をしっかりと果たしているという、当社への信頼感がベースにあるように思います。
 燃料油や石炭事業における収益は、現在の当社の基盤であり、かつ将来の事業構造改革に向けた投資の源泉でもあります。一方で2050年を見据えると、人口減少に伴って燃料油の需要が減退してゆくのは明らかです。当社の全ての製造拠点は、「カーボンニュートラル」と「地域貢献」という新しい役割を担う存在「CNXセンター」として存続させます。私たちはすでに、事業所・製油所・貯蔵設備をはじめとするインフラ、大量の危険物や高圧ガスを取り扱うノウハウを有しています。その点で、カーボンニュートラルに向けたトランジションを果たせるプレーヤーは私たち以外にいないと考えています。日々の安全・安定操業の知見の積み重ねこそが、将来にわたる当社の競争力の源泉であることを再度強調しておきたいと思います。
 次期中期経営計画では、「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つの事業領域を定めています。
 「一歩先のエネルギー」に関連するCNXセンター化構想の実例として、昨年はバイオマス発電所の竣工、SAF製造、使用済みプラスチックリサイクル、アンモニアサプライチェーン構築等の検討が進みました。これからも各地の特色と需要に応じたCNXセンター化を実現し、低炭素・資源循環エネルギーハブへの転換を進め、責任ある変革者として「人びとの暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たしていきましょう。「多様な省資源・資源循環ソリューション」については、昨年7月に先進マテリアルカンパニーを設立し、より迅速な意思決定が出来る体制を整えました。「スマートよろずや」については、「エネルギーよろずや」「モビリティよろずや」というコンセプトを打ち出しました。今後、サービスステーションは脱炭素・高齢化社会という社会課題を解決していく地域の拠点に衣替えしていきます。
 以上は現在の取り組みのほんの一例です。次期中期経営計画には、私たちの強みが活かせる、社会実装にこだわった具体的なメニューを提示しています。皆さんもこれをひとつの拠り所にしながらそれぞれの検討を加速して頂きたいと思います。そしてこれからも様々な選択肢を幅広く検討し厳選していくとともに、新しい芽を探索し続けていきます。そのためには、これまで以上に多様なパートナーとの連携が必要になってきます。常にアンテナを高く張り、世界中からベストパートナーを探し出さなければなりません。その際に軸になるのが、当社の価値観です。国・地域社会のために考え抜き、働きぬく当社の志に共鳴できるパートナーこそ、社会実装に向けた共創関係を構築できるのです。

 私たちを取り巻く環境がこれまでに類を見ないほど激しく変化する中、私たち自身も変化しながら社会の期待に応えていかなければなりません。立ち止まっている暇はありません。次期中期経営計画では、「事業構造改革投資」と「人的資本投資」を並列に位置づけ、「両輪」で事業ポートフォリオの転換を進める、としました。当社において、人の成長は、事業構造改革を進めるための手段ではなく、経営目的そのものです。人財戦略については、今回いくつかのKPIを定め、その達成度は役員報酬制度へ反映する形で経営チームのコミットメントとして公表しました。D&Iについては、先のKPIに加え、多様な国籍のスタッフ・社員の活躍の場を拡大するとともに、社外からも多様な人材を呼び込み、更に拡大・深化させていきます。この多様な人々が集う「場」で、それぞれの持ち味を活かして一人ひとりが生き生きと働く。これこそ私たちが目指す姿です。

 これから、「脱炭素」というキーワードでエネルギー革命が起こる時代に突入します。だからといって、明日から急に石油を使わない生活に移行できるわけではありません。既存のエネルギーであろうと、新しいエネルギーであろうと、大量かつ安定的に消費者に届けるという、我々が拠って立つところの使命は変わりません。この使命は、インフラや供給拠点を持たない企業では果たせないことです。イノベーションは非連続な価値創造の過程で生まれると言われますが、エネルギー転換は連続性が求められるのです。
 2050年カーボンニュートラル・循環型社会においても、「エネルギーとカーボンニュートラルソリューションのメインプレイヤー」となるべく、これまで蓄積してきた英知を結集し、既存のインフラを最大限活用することで、社会実装に取り組んでいきます。「想定外」の出来事が次々と起こるような先が見通せない時代に必要なのは、「柔軟な対応力」です。皆で一致団結し時代の荒波を乗り越えていきましょう。

 今年の干支は癸卯(みずのと・う)です。「みずのと」は、十干(じっかん)の最後にあたり、物事の終わりと始まりを意味すると言われています。また、「卯」という漢字は、字の形が、門が開く様子を連想させると言います。
 当社にとっても、本年は現中期経営計画が終了し、次期計画が開始する年です。2050年に向け、変革をカタチにすべく、社会実装に向けた新たな一歩を踏み出すための扉を開く、そんな一年にしていきましょう。
 本年も、出光グループの皆さんにとりまして素晴らしい一年になりますよう心より祈念し、私の新年の挨拶とさせていただきます。

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