年頭所感 横浜ゴム 山石昌孝社長

2022年01月26日

ゴムタイムス社

1.2022年振り返り

 第1四半期は、日本での降雪もありましたが、原材料価格や海上運賃などの物流費の高騰が大きく影響し、収益的には厳しい結果となり、第2四半期も、原材料、物流費の高騰が続きました。第3四半期は、フレートは下落傾向になりましたが、高騰前の水準には戻らず高止まりしている状況だったほか、インフレによるエネルギー費の高騰や、欧米を中心とした各国中央銀行による大幅利上げにより、急激に景況感が悪化し経営環境が急転しました。第4四半期も高インフレの継続や景況感の更なる悪化など、厳しい経営環境でした。

 第3四半期までの当社のタイヤ事業は、原材料や物流費などの高騰に対してMIX改善や値上げ、増販をした結果、売上収益、事業利益とも過去最高を達成することが出来ました。新車用タイヤについては、半導体不足の影響を受けましたが、北米や中国での自動車メーカーの生産回復や新規車種の獲得により、売上収益は前年同期を上回りました。市販用タイヤは、丁寧にマーケティングを行い、高付加価値品の拡販に努め、日本、北米、中国などで販売を伸ばしました。

 MB事業の売上収益は前年同期を上回りましたが、事業利益は前年を下回りました。ホース配管事業は、北米で自動車向けホース販売が回復しましたが、原材料価格やエネルギー費の高騰などにより増収減益でした。工業資材事業は、コンベヤベルトの国内販売は約5割までシェアを伸ばし、航空部品も民間航空機向けの需要が回復しましたが、増収減益でした。

 YOHTについては、原材料や、海上運賃の高騰による影響がありましたが、農機向けを中心に販売が堅調に推移し、売上収益、事業利益とも前年同期を上回り、過去最高となりました。

 当社は、2021年から2023年の3か年を中期経営計画『YOKOHAMA Transformation 2023(YX2023)』(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)を推進しています。我々が強みとして持っている既存事業の「深化」と、100年に1度の大変革期である市場変化の取り込み、つまり「探索」を同時に推進することにより過去最高の業績達成を目指します。

 タイヤ消費財では、まず、プレミアムカーへの新車装着に注力し、「ADVAN(アドバン)」では日産自動車の新型「フェアレディZ」、「GEOLANDAR(ジオランダー)」ではトヨタ自動車の新型「タンドラ」などに納入を開始しました。市販用では、2022年を「ヨコハマ夏の陣」と位置付け、ウルトラハイパフォーマンスタイヤ「ADVAN Sport V107(アドバン・スポーツ・ブイイチマルナナ)」と高性能ストリートスポーツタイヤ「ADVAN NEOVA AD09(アドバン・ネオバ・エイディゼロキュウ)」を中心に「ADVAN」ブランドの販売強化に努めました。また、モータースポーツ活動では、SUPER GT GT300クラスで「リアライズ日産メカニックチャレンジ」がシリーズチャンピオンに返り咲きました。米国ではパイクスピークインターナショナルヒルクライムレースで2年ぶりの総合優勝を果たしました。この1月から11月までの、「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」の販売本数比率は、前年の40%に対し、41%まで引き上げることが出来ました。また、18インチ以上のハイインチタイヤの販売本数比率も、前年の19%に対し、21%まで引き上げることが出来ました。

 タイヤ生産財では、「YX2023」において『更なる成長ドライバー』と位置付けているOHT事業の拡大のために、スウェーデンに本社を置くTWS(Trelleborg Wheel Systems Holding AB)の事業買収を3月に発表しました。タイヤの世界市場と当社の足元の現状を見ますと、世界市場は消費財と生産財の構成比が1対1であるのに対し、当社はこれまで3対2と、消費財に偏った構成になっていますが、今回の買収により、全体構成の適正化を図ります。また8月には、YOHTの生産能力増強のため、インドで建設を進めてきたヴィシャカパトナム工場が、前倒しで生産を開始しました。

 MB事業では、ホース配管事業の強化の一環として、米国およびメキシコの生産体制を再編し、競争力のある生産体制を構築しています。くわえて3月に、航空部品事業部を工業資材事業部へ統合しました。MB事業の強みであるホース配管事業と工業資材事業にリソースを集中し、「成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革」を進めています。

 ESGでは、主力工場である新城南工場をカーボンニュートラルのモデル工場として、再生エネルギー電力の活用や太陽光発電の導入、水素等の脱炭素燃料への転換などによる取り組みをスタートしています。サーキュラーエコノミーでは、「全日本スーパーフォーミュラ選手権」にワンメイク供給するサステナブル素材を活用したADVANレーシングタイヤの開発を進めました。また、社会への取り組みでは、人権方針を4月に策定し、人権デューデリジェンスの実施、苦情処理メカニズムの構築を行いました。

 これらの推進してきた活動と第3四半期決算を踏まえ、2022年度業績予想は、同年8月公表値を据え置き、いずれも過去最高となる売上収益8,550億円、事業利益625億円としています。

2.2023年の取り組みについて

 YX2023の最終年となる2023年は、「世界的な景気後退懸念」、「半導体不足による自動車生産の混乱」、「原材料価格・海上運賃の高止まり」、「ウクライナ情勢」など、より一層厳しい経営環境になると予想されます。

 タイヤ事業においては、高付加価値品の販売強化に努め、「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」の構成比率を更に拡大してまいります。2023年は「泥試合」をテーマに、「GEOLANDAR」の新商品の上市を行い、拡販に努めていきます。また、「ADVAN」45周年となります。レース等で我々がチャレンジする姿を応援して下さるファンの皆様に応えるべく、これまで以上にチャレンジをして行きたいと思います。

 MB事業では、ホース配管事業および工業資材事業での生産能力増強を進め、収益を伴った成長を目指します。

 ESGでは、「未来への思いやり」というスローガンのもと、「地球環境のために」「製品を通して」など5つのマテリアリティを、より具体的な事業戦略に結びつけ、基本理念の実現を目指します。カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーそれぞれのロードマップに則り、活動を着実に進めるとともに、人権尊重、コーポレートガバナンスなどE・S・Gすべての重要課題に取り組み、これらを持続的な企業価値向上に繋げてまいります。

 最後に、TWSについては、クロージングに向け手続きを進めている最中ですが、事業買収を完了した暁には、GD100で成し得なかった売上収益1兆円を達成して、次の成長へのステップに向かいます。

 なお、当社は2023年年初より本社機能の平塚移転をスタートさせます。これを機に社員一同決意を新たに皆様のご期待に添えるよう、より一層励んでまいります。今後も皆様の変わらぬご指導、ご鞭撻を頂きますよう、どうか宜しくお願い致します。

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