半導体基板の保護液剤を開発 ダイセル、オリジナル樹脂含有

2022年10月31日

ゴムタイムス社

 ダイセルは10月27日、半導体製造工程で多用されるフッ酸などのエッチング液から、半導体基板を保護する材料の開発に成功し、その成果を米国アリゾナ州フェニックスで開催された半導体ウェットプロセスに関する著名な国際学会「THE SURFACEPRE PARATION AND CLEANING CONFERENCE 2022」にて発表したと発表した。

 半導体製造プロセスには、さまざまな膜をフッ酸などのエッチング液に溶解させて目的の形を作り上げるウェットエッチングと呼ばれる工程がある。ウェットエッチングでは、できるだけ短時間で、溶かしたい膜だけを溶解することが求められる。溶かしたい膜と溶かしたくない膜の溶解速度の比を選択比といい、できるだけ選択比を高くすることが微細加工技術の鍵といわれている。

 エッチングの選択比を改良する手法として、目的の場所に選択的に膜を形成する領域選択的成膜(ASD法)という手法が注目を浴びている。このASD法により、溶かしたくない膜の上に選択的に保護膜を形成することで、エッチング液への溶解を抑制することができる。しかしながらASD法は、一般に高真空下で極めて高価なガスに基板を暴露する必要があり、コストおよび生産性に課題があった。

 そうした課題に対し、同社はエッチング液に対する保護液剤として同社オリジナルの樹脂を含有する液剤を開発した。同社オリジナルの樹脂はシリコン窒化膜に対し強く吸着する作用を持つため、同液剤でウェハを処理することによりシリコン窒化膜上に選択的に保護膜を形成し、フッ酸への溶解を抑制する。その一方で、シリコン酸化膜のエッチング速度には悪影響を与えない。この吸着力の強さから、同社は保護液剤に含有する同社オリジナル樹脂を「ナノひっつき虫」と名付けた。

 同社の保護液剤は、生産性はそのままにエッチング選択比を向上させ、低コストでエッチングすることが可能となる。また、半導体製造工場で使用されているエッチング液はそのまま使用できることも利点となっている。

 同製品は、12月14日~16日に東京ビッグサイトにて開催されるSEMICON Japan 2022でも紹介される。

 

ナノひっつき虫を開発

ナノひっつき虫を開発

 

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