インフラ商社特集 22年も底堅い需要を予想 原材料価格高騰が懸念材料に

2022年07月12日

ゴムタイムス社

 産業や生活など経済活動を営む上で不可欠な社会基盤として位置付けられるインフラストラクチャの略を示すインフラは、道路やトンネル、橋梁、下水道を始め、鉄道などの公共交通機関、移動体通信ネットワークなどIT関連などに提供される施設の総称を指す。
 これらインフラ施設では、多くのゴム・樹脂製品が使われ、我が国の産業の基盤づくりや公共交通機関の発展に貢献してきた。インフラ施設で使われる主なゴム・樹脂製品は、コンベヤベルトや搬送用ホース、防振ゴム、防舷材、ゴム支承、止水材、可とう継手、養生マット、排水管など多種多様に及んでいる。
 本紙では、インフラ施設で使われるゴム・樹脂製品を取り扱うゴム商社及び企業を対象にアンケートを実施した。アンケートでは、21年(21年度)の売上実績を始め、22年(22年度)の売上予想、インフラ商材の仕入価格などの項目を用意し、それぞれ回答を得た。
 21年(21年度)の売上実績(対前年比)の設問では、「上昇」「やや上昇」と回答した企業が約6割を占め最多となった。次いで「下降」が29%を占め、「横ばい」「やや下降」と回答した企業はなかった。21年度は20年度に比べ「やや上昇」と回答した企業が大幅に増える結果となった。
 一方、22年(22年度)の売上予想の設問では「やや上昇」が約71%最多で、「横ばい」が約29%で続いた。「上昇」「下降」「やや下降」と回答した企業はなかった。
 また、22年(22年度)のインフラ商材に関する仕入価格予想(対前年比)の問いでは、全ての商社で「上昇」または「やや上昇」との回答となった。「横ばい」「やや下降」の回答がほとんどだった昨年度と比べると、原材料価格の高騰がインフラ商材の仕入価格に影響を及ぼしていると考えられる。
 また、アンケートでは現在取扱いに力を入れているインフラ商材についても回答してもらった。
 ハシモト(東京都文京区、山田徹社長)は1925年の創業以来、ベルトやホース、パッキンなど工業用ゴム製品を販売するとともに、近年では2015年にベルトエンドレス工事などの工事モジュール関連を始めたほか、一般機械器具設置工事業と一般とび・土工工事業や一般鋼構造物工事業や一般舗装工事業などの建設業許可を取得し、業容を拡大している。
 現在、同社が注力するインフラ商材は、ベルト製品に加えてゴムチップ舗装や防舷材などを挙げる。ゴムチップ舗装では、公園の鋪道や学校などのグラウンドとしての案件が安定している。「競合他社との価格競争が厳しいが、施工業者と協力しながら新たな案件の獲得に力を入れていきたい」(同社)としている。
 カテックス(愛知県名古屋市、加藤巳千彦社長)が注力するインフラ商材は、高高ボルトシステムと高強度シリカレジン(ガンバンSRC)を挙げる。高高ボルトシステムは、高剛性で高速施工が期待できるボルトと、定着材・注入材を組み合わせた軟弱地山や高圧大量湧水地山に対応できる自穿孔ボルト(あるいはロックボルト)システム。切羽崩落対策や変位・変状対策、高圧湧水対策などを施工目的として使用する。
 高強度シリカレジン(ガンバンSRC)は2液を1・5ショットで混合・注入することにより数分で反応硬化し、数分でコンクリート並の圧縮強度を発現し、耐久性にも優れる無発泡タイプのシリカレジンである。また、数分で強固に結合するので、湧水の存在下でも希釈分散することなく反応固結。このため、水の白濁や泡立ちを抑制、周辺環境の汚染を予防(環境配慮)する。なお、同社はこのたびホームページを刷新した。インフラ商材を扱う建設資材事業はこれを機にさらなる拡販を目指していく。
 
 日加商工(東京都墨田区、加藤暢利社長)は工業用ゴム・プラスチック製品総合販売会社として、関東周辺約450社を対象に商品提供を行うとともに、グループ会社の日加R&E(リサイクリング&エンジニアリング)がリサイクルやゴムチップ舗装などを手掛けている。
 現在、同社が注力するインフラ商品は、ゴム製ハンプを挙げる。同社はこのほど特殊なゴム製ハンプ(凸部)を設けて路面に段差をつける工法が日本ライナー社が国交省の認定を受け、日加R&E社が全面的に製造を受け持っている。同社がゴム製ハンプに着目するのは、昨年千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込む痛ましい事故が起きた。この事故を機に国交省が通学路及びスクールゾーンでの安全対策を進めていることがある。
 同社が認定を受けた工法は今後各地に広がる予定で、「通学路の安全向上に資するものとして大いに期待している」(同社)としている。
■社会資本の老朽化と現状
 ゴム・樹脂業界がインフラ分野に注目する理由としては、高度経済成長期(1950年代後半から1970年代前半)に建てられたインフラ施設の老朽化が進み、老朽化施設への対策が急務となっていることがある。
 国土交通省の資料によれば、建設後50年以上経過する道路橋(約73万橋、橋長2m以上の橋)の割合は、2023年3月時点で約39%だったのが、2033年3月時点には約63%と上昇する。トンネルも2023年3月時点の約27%から2033年3月時点で約42%になる見通しだ。ただ、インフラ施設の老朽化は、建設年度で一律に決まるのではなく、立地環境や維持管理などによって状況は大きく異なるだけに、老朽化するインフラ施設をいかに戦略的に維持管理・更新していくかが課題だ。
 また、国土交通省が21年6月18日に策定した「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)令和3年度~令和7年度概要」では、予防保全への本格転換への加速化やメンテナンスの生産性向上の加速化、インフラストック適正化の推進等を通じ、持続可能なインフラメンテナンスの実現を目指すとしている。なお、計画期間内に取り組むこととしては、予防保全の管理水準を下回る状態にあるインフラに対しては、計画的・集中的な修繕などを実施し、機能の早期回復を図る。また、地方公共団体が適切かつ効率的なインフラメンテナンスを実施するために、新技術の開発・導入を促進するとしている。
 新技術の開発・導入に関しては、NETIS(新技術情報提供システム)などの活用による技術研究開発を促進することが大切。ゴム樹脂業界もインフラ施設の長寿命化に貢献する材料や工法を開発し提供していくことが求められている。

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー