特集 機能性フィルム・シートの最近の技術動向 機能性フィルムの最近の技術動向

2021年08月19日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 機能性フィルム・シートの最近の技術動向

機能性フィルムの最近の技術動向

KT POLYMER  金井 俊孝

1.はじめに

 コロナウィルスの感染が世界中に広まり、日本では第3次の緊急事態宣言が発出され、健康被害と経済活動に大きな影響を及ぼしている。従来、主に使い捨て紙おむつ用の需要が高かった不織布が、現在では使い捨てマスクや医療従事者用の防護服としての利用が今までになく高まり、一時期は品不足が深刻になり、これらの素材となるPPのSpunbondやMelt-blown不織布は、この分野での重要性が高まっている。感染防止でなかなか外出ができない状況では、賞味期限の長いレトルト食品などでバリア性の高い食品包装の必要性が高まっている。
 また、学校の休校や企業の在宅勤務者が増え、情報端末による教育や自宅での業務、WEB会議など、IT端末によるコミュニケーションの重要性が高まっている。今後のディスプレイ分野では、薄肉化、軽量化、高精細を特徴とする有機ELが液晶と比較し大きな伸びが期待されている。有機EL、LCD、太陽電池など電子部材はハイバリア性の機能が重要になってきている。また、通信分野では、高速・大容量、低遅延化、接続数の増加に役立つ5Gの普及の期待も益々高まり、比誘電率や誘電正接の小さな基板開発が積極的に行われており、5Gが普及すれば自動運転化にも拍車がかかる。2028年の米国で開催予定のロサンゼルスオリンピックでは、さらに次世代の6G通信が計画されている。これらのディスプレイや通信分野でも高機能フィルムが重要な役割を果たしている。
 一方、賞味期限切れにより大量の食品が廃棄されている。ハイバリア包装材料による食品の長期寿命化は、膨大な食品ロスの低減に繋がり、各種食品、弁当、酒類や医薬品などの各種包装や容器への展開が期待できる。多層化、リサイクル化の観点からハイバリアの機能を有したEVOH層を有する共押出多層二軸延伸フィルムも期待され、ハイバリア、脱酸素、多層化、リサイクルなど、更なる技術革新が必要である。
 環境問題として、ゴミ問題やマイクロプラスチックの海洋汚染問題なども深刻化しており、マイクロプラスチックの関連対策は年々重要性が増し、レジ袋は昨年7月から有料化が義務付けられ、Sustanableな素材、植物由来を原料した材料の採用、海洋での自然崩壊可能な素材が注目されており、ポリ乳酸(PLA)、セルロースナノファイバー(CNF)の研究も盛んに行われている。今後、包装材のリサイクル、リユース技術、減容化、モノマテリアル化の必要性も益々高まってくる。
 自動車分野では、大気汚染の観点からガソリン車から電動自動車(xEV)への移行が進行している。今後、xEVへの移行が進めば、この7~8年で使用される機能性フィルム部材は数倍の急速な伸びが期待されている。例えば、機能性フィルムとして、Liイオン電池用の微多孔構造を有する二軸延伸HDPEセパレータ、そのLiイオン電池パッケージに使用される二軸延伸PA6(BOPA6)フィルム、また絶縁破壊電圧が高く、高容量、高耐熱化、軽量化で2.5~3.0μmの超薄膜BOPPコンデンサーフィルムの需要の伸びが期待される。
 そこで、機能性フィルムを題材に、食品、飲料、医療品など、内容物を長持ちさせるためのバリア性包装フィルムや今後大きな伸長が期待される電池用フィルム、ディスプレイ用フィルム、加飾フィルム、高速通信用フレキシブル基板、不織布などの技術動向について、述べてみたい。

2.‌包装用フィルム・容器の動向および高機能フィルムテーマ

 内容物を長持ちさせる包装用フィルムであるバリアフィルムの開発により、食品の賞味期間のLong life化が可能になった。ガラス瓶代替のバリアPET容器(日本酒、焼酎、ワイン、炭酸飲料等)、新鮮生醤油の包装容器などは、バリア層として、例えば、酸素バリア層となるEVOH層を共押出層に挿入、蒸着やコーティング層の付与、酸素吸収層(アクティブバリア)を設ける工夫等がなされている。プラスチックフィルムは用途別に見るとプラスチック全体の約39%を占め、非常に大きな割合となっている1)。
 最近、機能性フィルム・シートとして、活発に研究開発が進められている興味あ

 

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