ABS樹脂に耐薬品性を付与 三洋化成工業、樹脂添加剤開発 

2021年03月05日

ゴムタイムス社

 三洋化成工業は3月3日、少量添加するだけでABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂に耐薬品性を付与することができる樹脂添加剤「ファンクティブ」を開発したと発表した。幅広い用途で活躍するABS樹脂に耐薬品性を付与させることで、ABS樹脂のさらなる用途拡大に貢献していく。

 ABS樹脂はアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンが共重合した合成樹脂の総称で、「耐衝撃性」と「剛性」のバランスに優れている。成形性、作業性にも優れ、美観もよく、比較的安価でありコストパフォーマンスに優れていることなどから、汎用性が非常に高く、家電製品や自動車部品、IT製品などの筐体など、幅広い用途で使用されている。しかし、ABS樹脂は非晶性樹脂であり、PPやPE、ナイロンなどの結晶性樹脂に比べると耐薬品性が劣るという課題があった。

 同社は、樹脂に導電回路を形成し、帯電を防止する「ペレスタット」「ペレクトロン」や、ポリオレフィン系樹脂の相容化性や無機フィラーの分散性などを向上させる「ユーメックス」をはじめとする樹脂改質剤を製造・販売している。同社の得意とする界面制御技術および高分子設計・合成技術と、これまで培ってきた樹脂改質剤の知見を活かして、この課題を解決すべく、ABSの耐薬品性を向上させる樹脂添加剤を開発した。

 ABS樹脂は溶剤などの薬品に接触すると、外観が劣化したり、クラックが発生する。「ファンクティブ」は、ABS樹脂に少量添加するだけで、ABS樹脂の耐薬品性を向上させることができる。また、2~5重量%という少ない添加量で効果を発揮できるため、機械物性にはほとんど影響を与えない。

 「ファンクティブ」は、汎用グレードのABS樹脂だけでなく、難燃ABSやガラス繊維・炭素繊維強化ABS、ポリカーボネート(PC)とABSの複合樹脂であるPC/ABSなど、高機能グレードのABS樹脂に対しても耐薬品性を改善することができる。同社は、これらABS樹脂の耐薬品性を向上させることで、適用部材や適用できる印刷、塗装、接着などの種類が広がり、ABS樹脂の用途拡大に貢献できるとしている。

 

キシレン滴下5分後の外観の様子

キシレン滴下5分後の外観の様子

 

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